住宅総合研究財団研究年報
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日独墺の住環境の質および構成要因に関する比較研究
早川 和男水原 渉北山 優子児玉 善郎
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1993 年 19 巻 p. 147-157

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抄録

 経済的には,他の西欧資本主義国を凌ぐまでに成長した日本で,多くの人びとが「生活の豊かさ」を実感できないでいる最大の原因の1つが,住環境の遅れと住むことへの不安にあることは,誰の目にも明らかである。また,急速な高齢化社会を迎えようとする日本にとって,生活と福祉の基盤としての住居の整備は,焦眉の急を要する課題である。更に,今日政府は「生活大国」の実現を国家目標に掲げている。生活大国が国民の生活実感を「豊か」にし,この国土に住むことに安心感と生きることの充足感にあるとするならば,住環境の質向上は,国政上の中心課題のひとつとならわばならない。それでは,こうした住環境の形成はどのような方向によって実現可能となるであろうか。西欧諸国の住環境が,そこに暮らす人びとの生活を支え豊かにしている要因は何であろうか。個々の住戸の充実,その住宅群が豊かな自然と一緒になって形成する美しい街並み,収入に対して過重とならない住居費負担額,そして,公園,生活道路,緑地,保育所,高齢者施設,劇場,図書館等々の生活文化教育施設,そして居住の安定性や住民参加の度合い,およびそれらを支える制度や社会組織の存在など,多くの点が考えられる。この研究は,第1に,ドイツのハンブルグおよびオーストリアのウィーンを対象に,住環境の質を構成する要因を現地調査によって解明する。第2に,日本に住む西欧人が日本の住宅に対して日々感していることをアンケート調査によって明らかにし,欧米からみた日本の住まいの問題点を明らかにする。西欧の住環境や西欧人の日本住宅批判が絶対的なものでないことはいうまでもないが,住宅先進国の実情を調べることは,日本の問題を明らかにする点で有意義と考えられる。

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© 1993 一般財団法人 住総研
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