住宅総合研究財団研究年報
Online ISSN : 2423-9879
Print ISSN : 0916-1864
ISSN-L : 0916-1864
住宅室内のカビ汚染と防止に関する研究
小峯 裕己倉渕 隆
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1994 年 20 巻 p. 295-304

詳細
抄録
 住宅室内におけるカビ汚染を防止するための本来の対策として,カビが発生しにくい,もしくは,生育しにくい室内環境を形成することが望ましい。 そこで,建材上にカビが発生しやすい温湿度範囲を解明するための実験を実施した。住宅内で検出される頻度が高いカビ4菌種の懸濁液,卵黄(発芽に必要な養分)を塗布した建材を,恒温恒湿のチャンバーに入れ12日間培養し,カビの発生状況,生育面積等を目視で観察した。その結果,レンズを対象とした既往の実験結果と比較して,建材ではカビが発生しやすい温湿度範囲がかなり広いことが分かった。20~30℃・90%RH以上の温湿度範囲であれば,全ての建材上に4種類のカビとも発生した。一方,湿度にかかわらず5℃未満または45℃を超える温度,もしくは,温度にかかわらず,80%RH未満の湿度では,建材上にカビが発生しなかった。この温湿度範囲が住宅内でカビが発生しにくい室内温熱環境の目安になる。この結果を踏まえると,カビ汚染を防止するための室内環境を確保する手段として,換気による室内相対湿度の低下が考えられる。そこで,換気を行なう居室と換気を行なわない居室の室内に設置した建材上へのカビ発生状況を観察した。換気を行なった部屋では,カビ発生が認められず,その有効性を確認できた。次に,住宅で最もカビが生えやすい浴室における対策を検討した。実測や実大実験により,浴室内温湿度がカビの発生しやすい範囲であること,壁面隅角部等で表面結露が発生しやすいことを確認した。そこで,カビ汚染防止対策として,入浴後,壁面や天井面に発生する表面結露を短時間の運転で乾燥できると思われる同時給排型浴室用換気設備を考案して,その効果を実大実験により検討した。夏期の外気条件でも,既存の排気だけの換気設備に比べ,表面乾燥時間が短縮でき,溶室内のカビ発生防止に対する効果が予想できる実験結果であった。
著者関連情報
© 1994 一般財団法人 住総研
前の記事 次の記事
feedback
Top