住宅総合研究財団研究年報
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阪神間の住宅地形成に関する基礎的研究(2)
近代日本の大都市郊外住宅地形成過程
坂本 勝比古鈴木 成文日色 真帆
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1995 年 21 巻 p. 211-226

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抄録
 この研究は,日本の代表的大都市郊外住宅地として発展してきた大阪,神戸間の地域を対象として,その形成過程を,前回に引き続き,更に掘り下げて考究したものである。阪神間の郊外住宅地は,その発生以来既に数十年を経過し,それぞれの住宅地は著しい変貌を遂げつつあるが,その中で所期の目的理念を十分生かした町づくりを持続しているところと,戦争や自然災害その他の理由によって,当初の意図が損なわれてしまったところとがある。この研究報告では比較的良好な住宅地で,かつ文献資料の入手が可能となった地域を対象として考察を行なった。第1章では,阪神間宅地分譲の動向として,宅地分譲の形態を分類し,特に大阪,神戸間に限定した大都市郊外住宅地の動向を取り上げ,第2章では,その中の主要住宅地について,具体的な例を基に分析・考察することとした。「浜甲子園健康住宅地」は,大林組住宅部が主として経営にかかわるが,全体計画や分譲のうえでの諸施策,またこの住宅地と連続した「阪神電鉄経営南甲子園住宅地」の形成,住宅地分譲の方策を探った。これらは,私鉄の沿線開発に結びつく住宅地経営であるが,一方,民間の土地会社が積極的に取り組んだ住宅地開発の事例として,「夙川香櫨園住宅地」の計画とその進行内容について触れ,この住宅地経営が成功していることを述べた。また,この住宅地に建った主な住宅建築について紹介する。更に同じく成功した事例として,「南郷山住宅地」(西宮市)についても,入手した土地分譲資料を基に,その特徴を示した。第3章では,浜甲子園,南甲子園で行なわれた中,小住宅の平面計画について,具体的事例を基に分析・考察した。第4章においては,住吉・御影地域の住宅地の形成が,画一的な宅地分譲方式ではない方法で行なわれ,大邸宅が集中する阪神間で最も高級な住宅地として発展したことを明らかにする。 以上のような阪神間郊外住宅地の調査を通して,これらの住宅地が日本の住宅地形成の上で先駆的役割を果たしてきたことを述べ,我が国の近代住宅史の上でも重要な意味をもつことを明確にした。
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© 1995 一般財団法人 住総研
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