住宅総合研究財団研究年報
Online ISSN : 2423-9879
Print ISSN : 0916-1864
ISSN-L : 0916-1864
中国北京における都市空間の構成原理と近代の変容過程に関する研究(2)
陣内 秀信朱 自煊高村 雅彦恩田 重直袁 牧鐘 舸笠井 健田村 広子王 亜鈞黄 偉文呂 絮飛高 柳村松 伸木津 雅代稲葉 佳子井上 直美
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1996 年 22 巻 p. 89-100

詳細
抄録

 本研究は,中国の北京を対象に,20世紀初頭から開始される近代化の過程で都市空間がいかに変容したかを明らかにすることを目的としている。長い歴史の中で都市形成の様々な層を重ね,しっかりとした空間の構造を築き上げてきた北京が,どのようなメカニズムで近代化を遂げたのかを,建築・敷地・街区・地区,そして都市全体のそれぞれのレベルに着目しながら,分析・考察するものである。この目的を達成するために,『乾隆京城全図(けんりゅうけいじょうぜんず)』(1750年),近・現代の地図,文献史料を駆使しながら,現地で実測・聞き取り調査を行ない,近代化の実態を解明した。まず最初に,政治的体制の変化を背景とする,都市全体の空間的ヒエラルキーの変化と新たなゾーニング(機能配置)の形成,交通網など近代のインフラストラクチャーの形成を分析した。 その結果,面的な大改造はあまり見られず,むしろ清代までに形成された都市の基本的骨格を受け継ぎながら,部分ごとの機能・意味の転換によって,近代化が推進された実態が明らかになった。 次に,北京の近代化を最も積極的に担った地区を,都市機能ごとに取り上げ,形成過程とその結果成立した空間の構造についで具体的に分析した。まず,外国公使館が集中し近代化の象徴となった〈東交民巷(ドンジアオミンシアン)〉を対象に,地区構成と建築の配置・様式を考察し,次に,西洋文化の流入とともに登場した住宅及び住宅地の系譜を解明した。一方,商業地として新たに登場した〈王府井(ワンフーチン)〉,そして伝統を引き継ぎ,発展させた外城の〈大柵欄(ダーヂアーラン)〉など,さらには後者の周辺に形成された旅館街を取り上げ,敷地の形状から店舗・建築の形式までを分析した。最後に,新規開発の例として〈万明路(ワンミンルー)〉周辺を扱い,計画・設計上の新しさについて考察した。こうして本研究によって,歴史的構造を持った北京か成し遂げた都市近代化の特質が明らかになった。

著者関連情報
© 1996 一般財団法人 住総研
次の記事
feedback
Top