住宅総合研究財団研究年報
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高齢者が在宅生活を続けるための住生活サポートシステムに関する研究(2)
住宅改善に関わるハード・ソフト面について
林 玉子蓑輪 裕子中 祐一郎小滝 一正大原 一興佐藤 克志狩野 徹前川 佳史堀端 克久安部 博雄
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1996 年 22 巻 p. 267-276

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抄録

 本研究は,一昨年の研究(1)に引き続き,高齢者のための住宅改善のあり方を,ハード面およびソフト面について検討するものである。今年度は前回の結果を受けて,主に以下の3つの課題,すなわち,(1)経年変化を考慮した住宅改善のあり方を明らかにする,(2)改善内容の評価方法について検討し,実際に評価を試みる,(3)多様な地域における住宅改善の実状を把握し,地域に応じた支援制度のあり方を明らかにする,ことを目的としている。調査の方法は,それぞれの目的について,(1)当研究室で平成2~5年に行なった訪問調査の対象者に対する,アンケートおよび訪問調査,(2)東京都江戸川区助成制度利用者に対し平成4年に実施したアンケート調査の再分析,(3)東京都23区,および,リフォームヘルパー制度の実施を検討している全国の自治体に対するアンケートあるいはヒアリング調査,施工業者へのアンケート調査である。以下に結果の概要を記す。(1)経年変化については,改善後数年を経ると,身体機能はおおむね低下しており,その際に入浴や排泄行為を本来の場所で行なえるかどうかは住宅の条件に左右されている。たとえぱ,杖歩行の人は,手すりの追加を希望あるいは実施しており,動線上への連続的な手すりの必要性が高まっている。また徐々に,室内で車いすを利用する人が増加しているが,自宅でシャワー浴を行なう人が多く,容易に洗い場へ入れるよう,入口の段差を解消することが必要とされている。また,浴槽への入溶はリフトが効果を発揮している。(2)改善効果の測定については,身体機能に応じて,どのような改善内容が居住者の自立あるいは介助者の負担低減に効果をもたらすのか,また,どのような配慮の組み合わせが相乗効果を持っているのか,について分析を行なった。(3)地域に応じた改善支援制度のあり方については,先駆的に取り組んでいる東京都23区に対する調査から,助成制度の金額や対象者制限,窓口の設け方,職員配置,専門職種の関与,施工業者の紹介などについて多様な方策が把握できた。専門職種および施工業者の関与の実態についてさらに調査を加えたところ,自治体によっては,専門家による相談と助成とを組み合わせた支援制度を実現しているが,全国的には較差があり,専門職種の関与の必要性についての考え方もやや差異が見られた。施工業者については,協力に積極的な人がおり,紹介制度や研修の充実を望んでいることなどが明らかになった。

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© 1996 一般財団法人 住総研
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