住宅総合研究財団研究年報
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都心型分譲マンションにおける外国人居住に関する研究
大久保地区におけるケース・スタディ
林 泰義稲葉 佳子塩路 安紀子笠原 秀樹太田 多圭子坂本 道弘
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1996 年 22 巻 p. 257-266

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抄録

 本研究は,東京都新宿区大久保1・2丁目,百人町1・2丁目,北新宿1~3丁目(以下,大久保地域と呼ぶ)の分譲マンションの外国人居住実態を把握し,都心立地の分譲マンションにおける外国人居住に関する今後の課題をまとめたものである。東京周辺の外国人居住の統計的整理及び大久保地域の賃貸住宅の外国人居住実態を把握した研究No.9010,No.9107の総論に当たるものである。 本研究では,まず地域内の分譲マンション全棟を訪問し,管理員等へのヒアリング調査により外国人居住の実態を定量的に把握した。その結果,調査が可能であった住棟の中で外国人居住者が確認できた分譲マンションは約9割に上った。外国人自身が区分所有者であるケースは少なく,ほとんどは賃貸化した住戸への居住である。これらの分譲マンションの建築年次・住戸数・住戸規模・管理体制等と外国人の属性や外国人に関わる問題を調べ,外国人に関わる管理上のトラブルの内容や要因を探った。加えて,管理員・管理組合・入居者・不動産仲介業者等への詳細なヒアリング調査を実施し,多様な視点から問題の発生する構造を捉えた。その結果,分譲マンションの外国人居住に関する問題は,区分所有者の管理意識の低さやマンション管理会社の業務に関する問題,不動産仲介業者の斡旋に関わる問題など,分譲マンション管理体制に内在する問題が外国人居住と複雑に絡み合って発生している場合が少なくないことがわかった。以上を踏まえ,外国人の問題を通じで鮮明に浮かび上がってきた分譲マンションの入居管理・日常管理に関する課題や,外国人居住者を受け入れ共に暮らしていくための課題を考察した。このテーマは,分譲マンションだけの課題にとどまらず,今後大都市の地域社会がどのように隣人を受け入れコミュニティを形成し,地域の居住環境を改善・向上ざせていくのか,といった課題とも深く関わっていることが明らかとなった。

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© 1996 一般財団法人 住総研
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