住宅総合研究財団研究年報
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住宅の室内空気環境に関する研究
住宅のカビ・ダニ防止に関する研究
田中 辰明田辺 新一芦沢 達
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1997 年 23 巻 p. 265-272

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抄録
 最近では省エネルギーの観点から高断熱,高気密の住宅が多く建設されるようになった。しかし,北海道以外では多くの住宅は依然アルミニウムサッシュが使用されている。このような場合,冬期に結露被害が生じ,下部の窓ガスケットには塵埃も溜まりやすく,さらに結露水が溜まり,ここにカビが生成する。日本の気候は多湿で,このような場所はカビの成育に最適な場所となっている。カビが生じると見苦しいばかりでなく,これがアレルゲンともなることから健康上にも悪影響を及ぼすものである。見えるカビは除去するか消毒を行なう必要がある。特にわが国の住宅は狭小なことから,窓近くに人が就寝しカビの胞子を吸引する可能性もあるからである。アレルギーの定義は免疫反応の結果体に害になったものをいう。免疫反応は通常体にとって異物であるものに対して起きる。そしてその原因になる異物はアレルゲンと呼ばれる。アレルギー性疾患は非常に増えており,アレルゲンの1つにカビ,ダニがある。この研究目的は日本住宅の徴生物の実体を調査することである。著者らは東京にある築後20年のソーラーハウスとして建設された住宅の窓ガスケットのカビと寝室の空中浮遊菌を採取した。採取は1995年の7月,8月,9月,12月に行なった。窓ガスケットは滅菌綿棒でカビを採取し,予め作っておいたPDA培地に接種し,恒温器で25℃に保ち4日間培義した。寝室での落下菌はやはりPDA培地を作っておき,開放をし採取を行なった。空中浮遊菌はRCSエアサンプラーを使用して採取した。このカビの同定を行なった。またベッドメーク前後の空中浮遊菌と落下カビを洋室の寝室と和室の寝室で比較した。その結果Cladosporiumが最も多く検出され,Aureobasidiumがこれに続いた。布団敷き前の状態に戻るには,布団敷き後1時間が必要であること,清掃により,カビは著しく減少することが判明した。
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© 1997 一般財団法人 住総研
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