抄録
本研究には2つの研究目的がある。1つは家族成長の代表的3つの段階における寝室選択に関する空間的要因を明らかにし,この抽出された空間的要因どうしの優先順序を分析することである。この研究目的を達成するための手順は,以下の通りとした。①最大就寝室が8畳以下である調査住戸を対象に,アンケートで得られた寝室選択理由を分析し,家族成長の3つの段階における重要視される寝室選択理由を明らかにする。②寝室選択理由より割り出された重要視される寝室選択埋由を,寝室選択の実態で検証し,3段階ごとの3大寝室選択要因を考察する。③2つの要因のうちどちらか一方しか選択できない平面における寝室選択実態より,検証された寝室選択要因の優先順位を明らかにする。結果を簡単に述べると,家族成長の3つの段階で,「和室」「南面」「o域(オープン域:LDKと直接つながる就寝室及びLDK自体からなる一連の空間)」「隣接(親子の寝室を隣接する)」「離す(親子の寝室を離す)」「k域(隔離域:LDKとは廊下で連結され,LDKと直接つながらない空間)」の6要因の中の3~4要因がそれぞれ重要視されることを明らかにした。2つ目の研究目的は,「寝室選択の変化モデル」と寝室系諸室の面積との関係を考察することにより,「寝室系諸室の規模算定法」を提案することにある。結果を簡単に記すと,子供の寝室は親の寝室の位置に規定され,面積との関係は明らかにならなかったが,親の寝室は,8畳は決定的要因ではなく,8畳を超える(調査事例では9~14.5畳)規模が寝室選択に大きく影響することがわかった。