抄録
リノレン酸メチルの自動酸化中にβ-トリプシン活性を阻害する一群の分解生成物が, すでに明らかにされているトリプシンのアミダーゼ活性促進物質ととも形成されていることがわかった。阻害作用の発現にはこれら分解生成物のカルボニル基と水酸基ならびにトリプシンのε-アミノ基が不可欠であること, ヒドロペルオキシドは必ずしも関与してないことを官能基の化学修飾実験で示した。このトリプシン阻害活性をもつ分解生成物はリゾチームやα-キモトリプシン活性を強く阻害したことから, 各種酵素に対しても阻害物質として作用しうることが推察された。これらのことは不飢和脂質の自動酸化中に各種酵素の阻害物質や促進物質が同時に形成される可能性を示唆している。