三河地方では,全国的に消えかけている土壁を使って今でも普通に住宅が建てられている。本研究では,この地域で土壁構法がなぜ衰退せずに,どのように維持されているのかを,職人,施主,材料供給者などの生産に係わる人々へのアンケートと聞取りの調査を通して分析することを目的にする。その結果,第1に瓦・タイルなどの土に係わる産業が古くから根付いており,それらに付随して建材を供給する体制が整っていること,第2に東三河地方では大都市都市圏に比べると住宅メーカーの進出が遅れ,在来工法に携わる大工,工務店,左官が割合多く活動していること,第3に東三河地方では本家造りと健康志向の人々が土壁住宅の施主となっていることが明らかとなった。