2007 年 33 巻 p. 147-158
堂上公家久世家は近世を通して町人地に居住した。本研究では久世家の町における居住形態,信仰形態に焦点を当て,近世における公家の都市生活の実態について検討した。本研究で明らかとなった点をつぎに示す。(1)久世家は近世を通して屋敷地を集積したが,町人と同様諸役を負担するとともに,家として町運営にも参加した。(2)久世家は仏事を通して寺院社会と深く関係していたが,それと同時に,仏事に必要な商品や労働力をさまざまな商人・職人に求めていた。(3)久世家の当主は日常的に内裏周辺の特定の寺社へ参詣するとともに,定期的に洛中・洛外の決まった寺社へも参詣しており,その都市生活は信仰と密接につながったものであった。