「ないから建てたい」。20世紀の日本での建設行為は,基本的にこの集団的な動機に支えられてきた。この集団的な動機が旺盛な公共投 資を支え,土地担保主義による資金調達を支えてきた。しかし,ストックが充足した21世紀の日本では,最早こうした動機に支えられた居住環境への投資は見込めない。新しいタイプの集団的な動機は「あるけど何とかしたい」という類のものに変わるだろうが,豊かな居住環境へ向けて新しいタイプの投資を継続的に可能にするのは,この利用側の欲求,そしてそれに関わる構想力を導入し,戦略的に組織化するこれまでにない方法であろう。本論文では,コンバージョンを例 に,この方法の輪郭を明らかにする。