2009 年 35 巻 p. 119-130
アルヴァー・アアルトは生涯でスケッチ程度のものも含めて,226件の住宅と共同住宅の設計をした。作品系譜を作成し,全体の展開を造形の様式と特徴で分析すると,ほぼ10年毎に作風を変えた事が判明する。エポック毎の空間の特徴を分析し,それに基づく造形の解析によって展開の過程を検証すると,その背景には交友関係からの哲学的,空間造形的な影響があるが,作風が変遷しても,幼少時に経験した大家族生活の「共同体‐コンミューン」の形態を基本とした住居観を,包み込む「もの」とした住空間をアアルトは一貫して造形し続けたという事が理解できる。