住宅総合研究財団研究論文集
Online ISSN : 2423-9887
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35 巻
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  • 外岡 豊, 寧 亜東, 韋 新東, 許 雷, 高 偉俊, 周 瑋生, 三浦 秀一
    2009 年 35 巻 p. 369-378
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は中国農村住宅でのエネルギー消費について,とくに農村でのバイオマス燃料利用について主として気候変動防止対策推進の立場から総合研究したものである。中国農村部における住宅の厨房用・暖房用燃料消費に用いられるバイオマス燃料(主としてトウモロコシ茎,葉等の農業廃棄物と小枝等,多くは自給)と石炭,LPG等の購入燃料消費実態,竈の種類,坑(カン)と呼ばれる厨房余熱暖房の実態について訪問質間紙調査を実施した。その目的は気候変動対策推進に向けた基礎検討と研究計画を構想立案,それに従った中国での研究体制の確立と国際共同研究における日本の貢献を目指すものであり,実態調査結果にもとづく今後の研究の可能性についても考察した。
  • 北欧及び英国のシティズンシップ教育を通した方法の検討
    薬袋 奈美子, 水上 聡子, 加藤 優子
    2009 年 35 巻 p. 379-388
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     シティズンシップ力とは生活に必要な知識の習得と同時にスキルが身についていることが必要である。スキルとは,適切に判断し,議論することのできる力,いかに行動すべきかを考えることのできる力を持つことで,特に情報収集・分析,様々な立場の視点,及び対話力といったスキルを培うことが大事である。この点において,日本の小中学校の教科書には限界があると感じた。諸外国の教科書等にある設問を確認すると,詳しい説明のついた教科書の中身にじっくり向き合った後,自分の中でじっくり考えを深め,答えは一つと限らないような課題を議論するという構成が重視されており,これらのスキルを身に付けられるようになっていた。
  • その空間,運営,事業計画の実態
    河井 容子, 堀田 祐三子
    2009 年 35 巻 p. 1-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     米国において,光ファイバーを住宅地に導入する際に,これを地域の活性化に活用しようとする動きがある。本研究では,まず光ファイバーコミュニティの拡大状況を把握し,その地理的分布と運営主体の組み合わせに,3パタンあることを示した。光ファイバーの地域への活用が予測される2パタン(3タイプ)について事例調査を行い,運営主体ごとにインフラの整備と活用手法に明らかな特色があること,光ファイバーを生活に不可欠なインフラとして整備する動きがあること,ミネソタ州テレコム生協事例が,地方での堅実な整備モデルになり得ること,光ファイバーの二面性の故に,その存在は未だ空間には明確に反映されていないこと等を明らかにした。
  • イギリスの計画許可におけるデザインの考え方との比較考察
    小浦 久子, 中井 検裕, 荏原 明則
    2009 年 35 巻 p. 13-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     景観法(2004)が制定され,都市計画の特例許可や景観地区の認定による現行の枠組みにおける計画許可の可能性が見えてきている。イギリスの計画許可制度におけるデザインの位置付けとデザイン評価の実際を調査し景観地区運用の現状との比較によりデザイン認定の可能性を検討した。計画許可型の運用により景観形成を図っていくには,1)都市計画の基準とデザインを一体で評価し審査するしくみ,2)地域性とデザインの関係を評価し調整する協議のプロセス,3)認定を担う専門性と社会的なデザインに対する評価の共有化を進める教育支援プログラム,が必要である。
  • 大阪支所開発団地の特定と尼崎冨田住宅の形成・変容過程
    塩崎 賢明, 三宅 毅, 田中 貢
    2009 年 35 巻 p. 25-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,住宅営団大阪支所によって開発された住宅団地の特定を行い,個別団地の形成過程と物的環境の変遷,および住環境の成熟状況を明らかにしたものである。営団大阪支所の開発した105ヵ所の団地のうち,従来その所在地が確認されているのは27ヵ所であったが,今回,これに加えて新たに28ヵ所の所在が確認できた。また,大阪支所開発の住宅団地のうち,尼崎市冨田住宅についてその開発経緯と今日に至るまでの成熟過程を追跡することができた。冨田住宅で当初開発された87戸のうち36戸は現在まで継続して居住しており,敷地分割も少なく,独特の住宅地の所有権保持の仕組みを通じて冨田住宅の住環境を安定的に保全してきたことが明らかとなった。
  • 阪神大震災復興住宅地における路地空間の変容分析を通じて
    三輪 康一, 安田 丑作, 末包 伸吾, 栗山 尚子
    2009 年 35 巻 p. 37-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     この研究は,密集住宅市街地にみられた路地のもつ意義を「路地性」と位置づけ,阪神・淡路大震災以前に路地空間で,震災後,道路整備と住宅が再建された事例を対象とし,戸建住宅の内外の接する境界領域と,前面道路・通路側の敷地内オープンスペース,敷際空間,前面道路・通路からなる外部住空間を設定し,現在の生活領域化の実態と,震災前の路地から整備後の変化とその要因について明らかにし,今日的な意味での〈路地性の継承〉につながる居住者意識や行為の傾向を把握するものである。その結果,路地性を規定する空間的要因が変化することで,領域の複合性,機能の多様性が減じる傾向と同時に表出や管理行為に関する継続意識も確認された。
  • 在日コリアン集住地区を対象として
    韓 勝旭, 神吉 紀世子
    2009 年 35 巻 p. 49-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,在日コリアン集住地区である京都市南区東松ノ木町と川崎市幸区戸手4丁目を対象として,コリアンの定住過程を住環境整備プロセスに着目して考察を行い,コリアン集住地区が持っている地域的特性を明らかにすることを目的とする。さらに,住民・NPO・行政が連携し,ローカル・コミュニティレベルでコリアンの住環境問題に取り込んできた東松ノ木町においては,その一連のプロセスに関わった住民・NPO・行政間関係について考察を行い,コリアン集住地区の住環境を支える仕組みを明らかにすることが第二の目的とし,これにより,コリアン集住地区を異文化交流の拠点とする,持続可能な多文化共生地域コミュニティの形成に向けた重要な経験を伝える資源的価値を有することを考察する。
  • 人口減少時代の都市構造再編に向けて
    谷口 守, 中道 久美子
    2009 年 35 巻 p. 61-70
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,都市コンパクト化が注目され,わが国においてもさまざまな行政主体で推進されている。しかし,現在でも都市は拡散し続けており,それに伴って環境負荷も増大し続けていると考えられる。このことから本研究では,どのような住宅地に都市コンパクト化施策を行なうことが環境負荷低減に重要であるのかを明らかにするために,交通環境負荷の指標である自動車燃料消費量に着目し,実際に住宅地開発等が行なわれる住宅地レベルでの経年的な自動車燃料消費量の変化を住宅地タイプを用いて分析をおこなった。分析の結果,都市のタイプや土地利用規制の違いによって自動車燃料消費量の増減には違いがあることを明らかにすることができた。
  • 一般市街地での住環境向上施策としての景観計画立案に向けて
    中島 直人, 野原 卓, 中島 伸
    2009 年 35 巻 p. 71-82
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は,東京都区部の戦災復興区画整理地区(36地区,1652ha)を対象として,その景観特性を把握することである。全地区の現地調査の結果,第一に,これらの地区では単調なグリッド街区配置を避けて,多様な街区配列が試みられており,景観の「地」の特性として,「抜け」型,「アイストップ」型,「シークエンス」型があることが分かった。第二に,何れの地区でも,公共空間の連続する緑が生み出す「隧道」,「回廊」的な街路景観が特徴として把握された。第三に,他地区では見られない大きな隅切りが角地建築の形態に影響していること,すなわち「隅切り呼応角地建築物」が景観の「図」となっていることが判明した。
  • 原田 陽子, 馬場 麻衣
    2009 年 35 巻 p. 83-94
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,近年,建替や土地譲渡などにより団地内での再生事業が進んでいる一方で,団地周辺では狭小戸建住宅や細街路などが多い香里団地とその周辺地域について,空間特性の把握を行なうと共に,団地周辺居住者の団地内外での住環境評価と住み替えなどの居住実態の把握を行った。また,立地・地形条件,開発時期,規模,再生事業の方法,居住者活動の状況など条件の異なる他の3つの郊外住宅団地(古市団地,緑町団地,高蔵寺NT)とその周辺地域を取り上げ,各地区の特徴を中心に団地周辺居住者の住環境評価と居住実態の把握を行った。これらの結果をもとに,周辺地域との関係性から見た郊外住宅団地の再構築の課題を整理し,その展開可能性を示した。
  • 開拓地と農村計画手法の比較分析を通して
    柳田 良造, 森下 満, 八幡 桃子
    2009 年 35 巻 p. 95-106
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     明治維新に始まる日本の近代は原野開墾や新農村集落の形成面においても,我が国開拓史の中で重要な意義をもっている。本研究は北海道と東北・北関東地域における近代期の農村開拓の代表的な事例の比較分析を通して,近代期に拓かれた農村,集落の空間的特質と形成,その変遷を,文献調査やフィールド調査から実態的に明らかにしている。特に従来異なる道筋を通して展開してきたと思われていた北海道と東北・北関東地域における近代期の農村開拓が実は多くの同時性や共通の計画原理を有するものであることを確認することができたことは大きな発見であった。
  • 八女福島伝建地区を中心事例として
    加藤 浩司, 山本 玲子, 北島 力, 中島 孝行, 中島 宏典
    2009 年 35 巻 p. 107-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     全国の伝統的建造物群保存地区(以下,伝建地区)では,それぞれの特色を活かした町並み保存整備が進められている。しかし一方,地方小都市にある伝建地区では,人口流出による空き家の増加が問題になっている。そこで,本研究では,空き家の活用を積極的に進めている地区の一つ,福岡県八女福島伝建地区を中心事例として,空き家発生・継続要因と空き家活用の仕組みに関する研究を行う。そのねらいは,空き家活用が課題となっている伝建地区,特に生活の場としての再生をめざす伝建地区にとって,有用な知見を獲得することにある。
  • 住空間の造形展開から見た設計哲学としての住居観について
    水島 優, 水島 葉子
    2009 年 35 巻 p. 119-130
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     アルヴァー・アアルトは生涯でスケッチ程度のものも含めて,226件の住宅と共同住宅の設計をした。作品系譜を作成し,全体の展開を造形の様式と特徴で分析すると,ほぼ10年毎に作風を変えた事が判明する。エポック毎の空間の特徴を分析し,それに基づく造形の解析によって展開の過程を検証すると,その背景には交友関係からの哲学的,空間造形的な影響があるが,作風が変遷しても,幼少時に経験した大家族生活の「共同体‐コンミューン」の形態を基本とした住居観を,包み込む「もの」とした住空間をアアルトは一貫して造形し続けたという事が理解できる。
  • 地域の住環境計画の視点による住区基幹公園活用を目指して
    三輪 律江, 尾木 まり, 高辻 千恵, 田中 稲子, 谷口 新, 松橋 圭子
    2009 年 35 巻 p. 131-142
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,横浜市の保育施設を対象とした屋外遊戯場の実態や公園利用の状況把握とともに,保育環境としての公園像について明らかにすることを目的とする。保育施設のほとんどが「週1回以上」園外活動を行うこと,週に1回以上利用する公園の66%が街区公園であること,園庭の広さが十分でない保育施設では公園をほぼ毎日利用といった園庭の代替利用の実態と共に,保育のねらいによる公園ニーズの相違を明らかにした。保育施設にとって公園は「屋外遊戯揚」の補完・代替だけでなく,保育を展開する上での積極(強化)的利用をする場として重要な位置づけであり,これらを受け止める地域との関係や体制のしくみづくりが急務な課題といえる。
  • 鈴木 義弘, 岡 俊江, 切原 舞子
    2009 年 35 巻 p. 143-154
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     2000年以降のわが国の独立住宅においては,中廊下型住宅が減少し,代わって居間中心型住宅の普及が著しいことを明らかにした。しかも,面積水準が高くなるに従いその傾向は強く,「居間階段」がその約8割を占めており,この場合には1階1室型の出現率が高い。一方で座敷を設ける世帯が激減し,さらには,和室を設けない世帯が急増していることなどを考え合わせると,そこには家族生活空間の拡充志向が認められ,居住後も家庭内交流への評価が高い。この点が普及の大きな要因の一つであり,空調効率の向上という技術的な背景が,これを促進している。最後に,居間中心型住宅の計画課題についても言及した。
  • 騎楼建築の保全・修復・再生プログラムの構築
    三橋 伸夫, 小西 敏正, 湯 国華, 金 俊豪, 陳 聡, 黎 庶旌
    2009 年 35 巻 p. 155-166
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     中国広州市の旧市街には,1920~30年代に建設された騎楼建築が街路に沿って並び独特の景観を創り出している。本研究は,この騎楼およびそれと一体的に密集市街地を構成する一般都市住宅における居住実態と居住者意識,さらには建て替え・修復の実態を明らかにした。騎楼および騎楼街路の歴史的価値が認識され,従来のスラムクリアランス型ではない騎楼街区の保全的再生に向けては,市政府もさまざまな取り組みや検討を行っているが,地域コミュニティを守りつつ劣悪な居住水準を向上させていくためにはいくつかの深刻な課題が内在している。財政的な支援にもとづく小規模な単位での建て替え,修復を積み重ねることが提案される。
  • 超高層住居の現在をめぐる総合的調査に準拠して
    貞包 英之, 平井 太郎, 山本 理奈
    2009 年 35 巻 p. 167-178
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,現在の超高層住宅の大きな部分を占める,1998年以降に建てられた東京の超高層住宅のあり方を,居住空間のイメージ分析や居住者の生活史調査をとおして,調査・分析したものである。あきらかにされたのは,この超高層住宅が,(1)東京の経済的沈滞を代償する商品の形式としてあったこと,また(2)それが新たな居住の価値を人びとに説得するイメージとふかく関与していること,最後に(3)このイメージを支えるのが,消費を中心とし,またそれを共同するライフ・スタイルであったことである。この意味で超高層住宅は,90年代後半以降の消費社会の展開を肯定し,また延命する商品としてあった。
  • 熊野型民家の平面構成の特性と変遷
    千森 督子, 山本 新平, 増田 亜樹, 川端 義治
    2009 年 35 巻 p. 179-190
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文は,紀伊半島南部の熊野地方の民家の平面構成の地方的な特性と近代化過程を,住生活史的に捉えることを研究目的とする。これらの地域の民家は,カッテと呼ばれる多機能な家族生活の場と炊事場の構成に特色があり,竈がカッテの土間境やカッテ中に据えられる。平面構成には複数の型がみられ,地域特有のものがある。変容過程にも,竈をカッテに据える伝統的な形態に近代的な廊下型を取り入れるなど,地域的な特色がみられる。一方,竃は時代と共に改良され,立式化等の過程を経るが,昭和40年頃からは燃料源の変化と共に姿を消し,炊事場の構成も変容し,近代化が進んでいく。
  • 阪神・淡路大震災を事例として
    近藤 民代, 葛西 リサ
    2009 年 35 巻 p. 191-202
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     社会的・文化的な位置づけの差異であるジェンダーによって,災害による被害や復興過程で男女の格差が生じる。本研究は,阪神・淡路大震災における従前住宅の脆弱性,住宅被害,避難行動,すまいの移行,居住ニーズにおけるジェンダー格差を既存の社会調査および独自のインタビュー調査などによって解明している。結論として,平時における母子世帯の住宅の脆弱性が,阪神・淡路大震災における住宅被害の実態に直結している点,母子世帯と子育て世代の核家族と比較すると,親類の近さや子供の通学などが居住地選択に大きな影響を与えている点を明らかにし,被災者の住宅を核とした地域生活空間を継承できるような施策が求められていることを指摘した。
  • 自治体の高齢者居住施策にみる連携の到達点と展望
    佐藤 由美, 三浦 研, 長谷川 洋, 塩路 安紀子
    2009 年 35 巻 p. 203-214
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,高齢者居住政策をもとに住宅・福祉政策の連携の実態や課題を把握し,今後の政策の方向性を検討することを目的としている。まず,高齢者等対応住宅政策の変遷をたどり,高齢者福祉政策との関係の変化を把握した。さらに,自治体住宅部局・福祉部局を対象にアンケート調査,インタビュー調査,事例調査を実施した。その結果,1)一部の自治体は効果的な連携施策を実施しているが,多くの自治体では実質的な連携が図られていないこと,2)今後,市民(住み手)のニーズの把握等による課題の共有化が必要なこと,3)地域づくりの観点で福祉や都市計画,まちづくり等と総合的な連携を図っていくことが重要なこと,等を明らかにした。
  • 境野 健太郎, 鈴木 健二
    2009 年 35 巻 p. 215-226
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,史資料の散逸が激しく,また語り手である入所者の高齢化が進むハンセン病療養所において,「隔離施設」として発展した施設構成の変遷を明らかにした上で,居住の自由を奪われた「隔離施設」での居住の実態を寮舎及び患者住宅のプラン変遷から解明した。また,入所者による居住環境改善過程について詳細な分析を行い,人権が激しく毀損され,自己のアイデンティティを問い直される環境に長期におかれる中で,自律を獲得し,自分らしい生き方を回復していく過程/手段のひとつとして,居住環境の改善が行われてきた事実を明らかにした。
  • 全国脊髄小脳変性友の会の活動支援に焦点を当てて
    池田 誠, 古川 順光, 塩田 琴美, 池田 望
    2009 年 35 巻 p. 227-238
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     脊髄小脳変性症の友の会会報誌を利用して住宅改修情報の提供による効果を検討した。改修の現状把握と戸別訪問(14名)で指摘した結果を情報提供した後の住宅改修への意欲の変化を段階的に調査した。第1段階(1469名,回収率34.9%)で分析した473名中71%が改修をすでに実施していた。情報提供後の第3段階(1084名,回収率35.3%)で分析した366名中71.3%が改修を実施済みで,その内114名(43.7%)が再改修意欲を,未改修の105名中27名(25.7%)が改修意欲をもつ変化を示した。改修意欲を高めるためには,専門家による相談・計画,重症度の違いと改修場所の写真の具体的な改修情報の提供が必要と考えられた。
  • USAにおける高齢者-若者シェアの体験を通して
    宮原真美子 真美子, 永峰 麻衣子, 垰 宏美
    2009 年 35 巻 p. 239-250
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,今後確実に増加すると見られる単身高齢者の生活のあり方を,アメリカで行われている異世代・非血縁によるシェア居住である「ホームシェア」から探りその方向性を示唆することを目的とし,アンケート調査,及び,ヒアリング調査・実測調査を行った。これらの調査から,1)ホームシェア居住者の生活実態,2)ホームシェアの行われている住宅の歴史,使われ方の変遷を明らかにした。その結果,ホームシェアでは,居室面積や設備数が充実しているため,居住者間による空間の使い分けが行われていることが分かった。また,居住者間の行為の共有は少なく,生活の独立性は高いものの,ひとつ屋根の下に暮らす安心感があることを突き詰め,現実的な解決策になり得ることを示した。
  • グループホーム型居住施設の実践的研究
    桜井 康宏, 松村 正希, 大谷 貴美子, 阿部 麻衣子, 高橋 孝雄
    2009 年 35 巻 p. 251-261
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,食環境の改善に本格的に取り組むグループホーム型居住施設の有効性を,入居者の発達的視点から検証することを目的とするものであり,筆者らが実践的に共同研究を行う複数施設(とくに熊本と高知の2施設)において,「施設記録・日誌等の分析」「生活行動観察調査」「職員に対するアンケート調査」を実施し,熊本では調理実施ユニットと非実施ユニットの比較検討,高知では入居後半年間の変化を主たる分析課題とした。入居後2年半を経る熊本では,多くの発達的事実と調理を実施するユニットの優位性を確認した。入居後半年の高知では,それらの事実が相対的に少ないとはいえ,発達的変化の兆しが現れていることを確認した。
  • 建築敷地の全面空地に着目して
    森本 信明, 前田 享宏
    2009 年 35 巻 p. 263-274
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     小規模な敷地が多い高密度な都市型住宅地における前面空地は,上空面とならんで,都市居住やまちなみ形成という面からみて重要な空間である。この前面空地の現実の土地利用を観察すると,地域によっては違法あるいは違法すれすれの土地利用が多く見受けられるところがある。本研究においては,旧建築線がなお生きている大阪市の船場と東大阪市,ならびに都市型戸建ての新しい住宅地供給がみられる八尾市をとりあげ,違法・グレイな土地利用の実態を明らかにするとともに,そのような土地利用がなぜ地域において許容されているのかを分析し,現状では違法となる制度的枠組みの再検討を迫っている。
  • 外国人を受け入れたホスト社会側の対応と取り組みを中心に
    稲葉 佳子, 石井 由香, 五十嵐 敦子, 笠原 秀樹, 窪田 亜矢, 福本 佳世, 瀬戸 一郎
    2009 年 35 巻 p. 275-286
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,外国人を受け入れた主に団地自治会の対応状況を明らかにすることを目的として,関東・中部地方の10団地で調査を実施した。事例調査から,小規模団地であれば外国人入居率1割未満の段階から積極的に取り組みをはじめることが,外国人との共生では有効であり,取り組みが効果をあげれば外国人入居率が過半数になっても,共生できることが確認された。しかし団地自治会だけで対応することは困難であり,行政,NPO,広域自治会等による支援が不可欠なことも明らかになった。
  • 東海地区の住宅市場を対象として
    村上 心, 橋本 雅好, 川野 紀江, 生田 京子, 谷 武, 小杉 学, 井戸田 秀樹
    2009 年 35 巻 p. 287-296
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,近い将来における中古住宅ストックの評価基準の確立を目指し,次のように基礎的事項に関する整理・検証を行った。(1)日本における既存の住宅(建物)評価基準などの文献調査,及び,専門家へのインタビュー調査により,包括的な中古住宅ストックの建物評価項目案を提示した。(2)各建物評価項目について,評価のための定量化に関する検討を行った。(3)設計者・不動産業者・居住者らの主体による評価項目への重視度合いの相違を抽出・比較した。(4)国内住宅メーカー各社,及び,韓国,米国において,中古住宅の評価に関してどのような取組みがなされているのかを整理し,専門家による各項目の重視度をインタビュー調査により詳細に抽出した。
  • 大工技能の作業研究および継手の強度試験に基づく考察
    蟹澤 宏剛, 増田 千次郎
    2009 年 35 巻 p. 297-308
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     我が国の建築技術は世界でも最高レベルにあり,特に,木造建築の加工に関しては特筆すべきものがあるとされる。しかしながら,従来,そうした熟練技能は,技能者間の口伝や徒弟による経験により体得するものだとされ,研究の対象とはされてこなかった。技能は,過去のものではなく,今でも改良が重ねられ続けている。そこには,現代,そして未来の技術開発に寄与しうる英知が結集されている可能性がある。本研究は,熟達した大工の技能を作業研究および構造実験により詳細に評価しようというものであるが,技能承継に資する資料を作成といった意味だけでなく,持続可能な木造住宅の生産システム構築に寄与することを目的としたものである。
  • 効果における制度・助成事業の役割
    西野 亜希子, 西出 和彦
    2009 年 35 巻 p. 309-320
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,高齢者,障がい・児者を対象とし,住宅改修の効果とニーズを捉える。また,介護保険制度や自立支援法の住宅改修,自治体が独自で行う助成事業意義を明らかにし,物的環境と制度から,在宅生活の維持・継続に向けた住宅のあり方を検討するための知見を得る事を目的とする。調査は,高齢者・障がい者向け住宅改修助成事業の委託業務を行っているNPOの制度利用者,リハビリ病院退院患者,障がい児・者を対象に行った。調査で得られた共通ニーズを基に,「計画時の考慮点」と「改修時の考慮点」をまとめた。
  • 民衆住宅再建計画とカンパメントス・ウニードスの活動に着目して
    天野 裕, 土肥 真人, 木村 直紀
    2009 年 35 巻 p. 321-332
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,1985年に発生したメキシコ大地震の復興政策,およびNGO・民衆セクターによる住宅再建の取り組みを対象とした調査を行い,震災復興政策の社会的影響として,メキシコシティ都心部のインナーシティをもともとの住民を外部に追い出すことなく,かつ安価な条件で住宅供給を行うことで解消し,一方で被災者運動の成功が復興政策に含まれなかった住宅問題の取り組みに大きな推進力を与え,震災以降政治変革を迫る社会運動として発展していったこと,また自助建設活動の意義として,伝統的な共同体生活に不可欠な居住空間を継承した住宅の再建および包括的なコミュニティデベロップメントを通じた地域社会の再生を達成したことを明らかにした。
  • 日本型リースホールドと新・管理者方式にむけての検討-
    齊藤 広子, 長谷川 洋, 阿部 順子, 戸田 聡子, ヨム チョルホ, 西戸 啓陽
    2009 年 35 巻 p. 333-344
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,日本の集合住宅の新たな管理方式と所有形態の検討を行うことを目的としている。目的を達するために,アメリカ,韓国,フランス,イギリスの管理方式と所有形態の制度と実態を明らかにした。結果,次のことを明らかにした。アメリカでは多様な共同所有の形態があるが,管理方式は理事会方式で理事会の権限が大きい。韓国は大規模マンションが多いために,代表者による決定方式がとられる。フランスは管理会社が管理者となる管理者方式が多い。イギリスではコモンホールドとリースホールドなど,多様な所有形態と管理方式がある。わが国においても,現法スキームの中で,諸外国を参考にした多様な管理方式が可能である。
  • 長谷川 兼一, 吉野 博, 池田 耕一, 柳 宇, 熊谷 一清, 三田村 輝章
    2009 年 35 巻 p. 345-357
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     児童のアレルギー性疾患の有症率が全国的に上昇していることを背景に,居住環境との関連性を明らかにするために,疫学的な調査デザインを行い,全国規模の調査を実施した。その結果,(1)全国的にアレルギー性疾患の有病率は高く50%前後であり,特に,アレルギー性鼻炎の有病率が最も高いこと,(2)アレルギー性疾患の原因として花粉,ダニ,ハウスダストの割合が高いこと,(3)児童のアレルギー性症状は室内環境要因に関連があり,特に,湿気が多い状態(ダンプネス)と各症状とに有意な関連性が示され,結露やカビの発生が結果として児童のアレルギー性疾患の発症に影響している可能性があること,などがわかった。
  • CFD・熱収支解析に基づく予測モデルの構成と検証用実測
    富永 禎秀, 持田 灯, 深澤 大輔, 山崎 剛, 堤 拓哉
    2009 年 35 巻 p. 357-367
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,住宅の屋根雪の積雪深や風による偏分布を高い精度で予測できる数値シミュレーションシステムを開発するための基礎的研究を行った。まずこれまでに筆者らが開発してきたCFDに基づく雪の飛散・堆積モデルを屋根雪分布の予測に適用し,その課題を明らかにするとともに,今後の精度検証に有効な実測データを収集した。さらに風による雪の飛散・堆積シミュレーションに雪面の熱収支解析を加えた総合的な積雪シミュレーションの手法を示した。また雪粒子の影響による浮力効果と乱流エネルギーの減衰を表現するために,kとεの輸送方程式に付加項を組み込んだ飛雪モデルを提案し,実験や実測結果との比較により精度を検証した。
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