2009 年 35 巻 p. 179-190
本論文は,紀伊半島南部の熊野地方の民家の平面構成の地方的な特性と近代化過程を,住生活史的に捉えることを研究目的とする。これらの地域の民家は,カッテと呼ばれる多機能な家族生活の場と炊事場の構成に特色があり,竈がカッテの土間境やカッテ中に据えられる。平面構成には複数の型がみられ,地域特有のものがある。変容過程にも,竈をカッテに据える伝統的な形態に近代的な廊下型を取り入れるなど,地域的な特色がみられる。一方,竃は時代と共に改良され,立式化等の過程を経るが,昭和40年頃からは燃料源の変化と共に姿を消し,炊事場の構成も変容し,近代化が進んでいく。