2011 年 37 巻 p. 297-308
本研究は,『源氏物語』の舞台となった寝殿造の空間が,中近世を通してどのように理解されたか,中近世における『源氏物語』の住宅考証史を通して明らかにする。15世紀『花鳥余情』は, 同時代の住空間を背景に,文献上で寝殿造の復原を試みる。15世紀『源氏物語人々居所』及び17世紀『十帖源氏』は,六条院の作図を試みるが,寝殿と対からなる構成を描出できていない。しかし,そこには当時の人々の『源氏物語』の庭と庭を舞台とした遊興への関心を見出すことができる。その後,18世紀後半松岡行義著『源語図抄』『源氏類聚抄』は,裏松固禅『大内裏図考証』『院宮及私第図』を典拠とし,寝殿造像を視覚的に表現することが可能となった。