住宅総合研究財団研究論文集
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  • 1964年東京五輪と2008年北京五輪の日中比較研究
    浜本 篤史, 吉冨 拓人, 中岡 深雪, 李 国慶, 譚 縦波, 真野 洋介, 于 建明
    2011 年 37 巻 p. 95-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,1964年東京五輪と2008年北京五輪を対象に,開催決定から閉幕後までの期間を「五輪開催期」と定義した上で,この期間における都市計画,不動産市場の動向,さらに立ち退き問題について,五輪との関連で多面的に捉えようと試みた。文献研究および聞き取り調査の結果,都市計画では既存の道路建設計画の遂行という側面が強い東京に対し,北京の場合は会場計画の配置が既存のマスタープランとは必ずしも合致しないことなどが把握された。また,北京における持家化の速度が激しいこと,立ち退き問題では両都市において意外と類似した側面は多いが,北京においては住宅制度改革の進行と関連して問題構造がより複雑であることなどが確認された。
  • 浜甲子園団地における自力改修の実践的研究
    大坪 明, 江川 直樹, 鈴木 克彦, 横山 俊祐
    2011 年 37 巻 p. 131-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    学生が自力改修して出来た多様な住戸は,高経年住戸の多目的利用の可能性を示した。住戸の多目的利用は,団地住民の利便・快適性向上に寄与し,団地再生の一つの手法となる。多目的利用に重要な住戸プランニングの自由度は,壁構造に比ベラーメン構造の住戸のほうが高い。ラーメン構造の住戸を使い続けるために,耐震性を高める改修,利用者の募集・選定,利用者によるインフィル施工という三段階整備を提案する。資源循環型社会形成に寄与する廃棄建設資材利活用に関しては,コーディネータを中心とし,建設業者,デザイナー・加工業者,流通業者によって構成される社会システムを提案する。
  • 福岡県甘木市のMタウンと長野県軽井沢町のS別荘地の事例
    竹田 喜美子, 番場 美恵子
    2011 年 37 巻 p. 321-332
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,高齢者の居住継続を保障する居住環境を探る。高齢者コミュニティであるMタウン及びS別荘地の調査分析結果を示す。双方の居住環境にはそれぞれメリット・デメリットがあり,それぞれのメリットを結合することで理想的居住環境の実現が可能ではないか。以下3点を提案した。(1)居住者組織と管理会社,並びに地元自治体とが連携し,居住と福祉が結びついたサポートシステムが不可欠となろう。(2)年齢差のある高齢者集団を構成することにより居住者間の生活サポートの連鎖を実現できよう。(3)趣味やボランタリー活動により高齢者間の活発な交流が可能となるような施設を管理会社が提供することも必要であろう。
  • 既存不適格木造住宅の破壊モード分析と存在戸数調査
    藤田 香織, 千葉 一樹, 佐藤 弘美, 松田 昌洋
    2011 年 37 巻 p. 333-344
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究は主に1981年以前に建設された木造住宅を対象に,過去の地震被害調査結果に基づきその破壊モードの類型化を行うと同時に,存在戸数の調査を行った。その結果1960 年代頃以降の木造住宅は,建設年が新しくなると比例的に被害程度が減少する傾向が認められる一方,1950年代以前は木造住宅の母数が急激に少なくなるが,地震被害と建設年の間に明確な相関が見出せないことを明らかにした.また,限られた数の調査結果からではあるが,都市部に多くみられる狭小間口・接道型の住宅形式は1層破壊という危険な破壊モードを示すと同時に被害率も高い。計画的な制約から困難を伴う場合も多いが,早急に補強方法の対策を講じる必要がある。
  • 在日コリアンコミュニティの地域再生と居住支援
    全 泓奎, 川本 綾, 本岡 拓哉, 宮下 良子, 李 度潤, 福本 拓, 中山 徹, 水内 俊雄
    2011 年 37 巻 p. 49-60
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は日本における社会的不利地域の一つとして在日コリアンコミュニティに焦点を当てた。特に都市部(大阪市西成区)と地方(和歌山県)を対象に調査を行った。調査は,約30 名の在日1・2世住民へのライフヒストリー調査に加え,地域再生に向けた現状を明らかにするため質問紙調査を行った。高齢化が進む在日コリアンコミュニティでは,住宅の老朽化と世帯数の減少が進み,住宅管理や介護サービスへのニーズが増えることが予想され,地域再生にあたってはそれらへの対応が欠かせないことが明らかになった。また,地元組織の強化やサービスデリバリの新たな手法の工夫も必要であり,地域再生を担う新たなコミュニティビジネスの工夫が必要である。
  • 都市計画法34条11号条例及び同12号条例の運用成果の検証から
    浅野 純一郎, 熊野 稔
    2011 年 37 巻 p. 61-72
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,地方都市を対象にして開発許可条例の導入効果や課題を実証的に明らかにするものである。3412号条例に関しては,開発許可業務の合理化や迅速化について条例導入の効果が認められるものの, 3411号条例については,本来の目的である調整区域内集落の維持や衰退防止に対して充分な効果は認められない。むしろ,条例導入による開発規制の緩和が想定以上の開発を引き起こす事例が見られる。その為,地域の開発動向に照らした適切な対象区域指定や許可用途の設定が求められると同時に,今後は対象区域指定の要件に住民参画を加える等,集落の成熟化に備えた運用の工夫が求められる。
  • 地区改良コミュニティプログラム(PCMB)を対象として
    天野 裕, 吉田 祐記, 土肥 真人, 木村 直紀
    2011 年 37 巻 p. 73-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,メキシコ・シティの地区改良コミュニティプログラム(PCMB)を対象とし,2007年度採択プログラム45件から,参加の程度,独創性,達成度が高い地区を4件抽出し,各地区の都市民衆運動およびそれに準ずる活動の前史とPCMBの実施プロセス,実施後の展開との関係性について調査を行った。結論として,PCMBが地区の実情に応じて様々な公共空間整備に寄与していること,従前の住環境改善の組織的取り組みがPCMB実施の効果を高めていることを明らかにした。また,PCMB実施上の指針として,1.制度的資源の活用,2.地域的資源の開拓,3.地域アイデンティティの醸成,4.手法の明文化・継承の4点を提示した。
  • 谷口 尚弘, 湯川 崇, 苫米地 司
    2011 年 37 巻 p. 85-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,居住者の除雪行動を把握した上で,除雪労力と住戸計画の関係から雪処理に配慮した住宅(地)計画の基礎資料を構築することが目的とするものである。研究対象地区は,住宅地の雪対策が充実している旭川市に隣接する鷹栖町の新興住宅地であり,そこの地区の居住者に「除排雪に対するアンケート調査」「居住者の除雪行動を把握するため除雪記録簿を配布しモニター調査」「冬期間の除雪状況の把握をするため現地調査」を実施し,居住者の除雪量を定量的に算出し,除雪量と除雪行動の関係を主たる分析した。多くの住民は出勤前に除雪をおこない,敷地内雪堆積場所(敷地内空地)に排雪するのではなく,空地や公園または道路(歩道)排雪に依存していること,が確認できた。
  • 「無名」の民家を基準とした日本の居住空間・景観の変容分析
    中谷 礼仁, 清水 重敦, 石川 初, 御船 達雄, 福島 加津也, 菊地 暁
    2011 年 37 巻 p. 97-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    大正11(1922)年に刊行された今和次郎著『日本の民家』は,紹介された民家の無名性が特徴的である。本研究では,それら民家の所在を工学院大学所蔵の今の「見聞野帖」をもとに復元再訪し,約90 年間にわたるそれら市井の民家の変容とその要因を検討した。結果として今和次郎の民家調査の史的批判を行い,それが日本の民俗学の揺籃期に並行していくつかの性格の異なった期間に分けられること,民家採集に選択方法が存在していたことを指摘した。そして,90 年間の変容分析によって民家の変容が国土改造の政策に影響を受けていることと,個々の事例の詳細な検討によって家内部の事情から発生する要因にも共通性があることをも指摘した。また,所有しているが住んでいない状態が民家の残存に特殊な意義を持つことを指摘した。
  • 「通りと広場を囲む空間単位」の計画とデザインガイドによる支援
    佐藤 圭二, 松山 明, 鶴田 佳子, 大竹 芙美, 伊藤 佳代, 石塚 悠圭
    2011 年 37 巻 p. 109-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
     大都市郊外には従来から集落を形成したり徐々に小規模な開発による市街化が進んだりする地域がある。これらの多くは基盤(特に道路)が未整備な地区が多い。これらは市街地と未開発地や農地が混在しており,地区全体を土地区画整理のようなまとまった開発方法で整備することは困難である。本研究は,イギリスの居住地デザインガイドのシステムを参考として,こうした地区の開発と整備を行うために計画単位を小さくし,道路1リンクあるいは広場的な公共空間とそれとを囲む敷地建物群を単位とした開発整備方法を検討し提案することを目的としたものである。
  • 「高密度居住」を可能にする木造長大家屋の特質と居住文化
    清水 郁郎, 蟹澤 宏剛, 木本 健二, 畑 聰一, 増田 千次郎, ポンティップ パタナー, テップカイソン トンワン
    2011 年 37 巻 p. 121-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ラオス人民民主共和国においてベトナムと国境を接する南部山地に居住するモン・クメール語系集団のうち,パコ社会におけるロングハウスを調査し,その建築物としての特性と,「高密度居住」や「共住」を可能にする社会・文化的特性を究明すること,それにより,東南アジア大陸部の木造家屋研究に一定の貢献を果たすことを目的とする。
  • 台北市青田街の日式住宅を事例として
    郭 雅雯, 清水 貴史, 黄 蘭翔
    2011 年 37 巻 p. 133-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,日本統治時期(1895年~1945 年)に日本人の持家として建設された台北市昭和町の住宅を取り上げ,日本統治時期の居住者であった日本人と現居住者である台湾漢人を対象に,居住状況に関するインタビュー調査を行った。さらに,現存しているこれらの建物の実測調査,そして現居住者による使用実態の調査とも合わせ,日本統治時期から現在までの居住空間の変容過程についてまとめた。これまでの調査を通し,台北市青田街(旧昭和町)日式住宅の日本統治時期から現在までの居住空間の変容過程が明らかとなり,この街と建物の特徴を把握することが出来た。
  • 先祖祭祀と学芸の場としての意味
    小沢 朝江, 小粥 祐子, 赤澤 真理, 長田 城治, 波多野 想
    2011 年 37 巻 p. 145-156
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,日本住宅独自の意匠であるトコノマについて,仕様と用法の関係を上層住宅・庶民住宅の双方から検討するものである。内裏・江戸城では,公的な場では板床,私的な場では畳床が使い分けられ,内裏では宝永期以降畳床の使用が表向に広がる一方,江戸城では大広間・白書院上段の間等で幕末まで板床を堅持した。板床・畳床の場の性格による使い分けは室町後期の会所等ですでに確認でき,畳床の採用の拡大は,表向で「書院」を重用する殿舎構成の変化に伴う可能性が高い。一方庶民住宅では,地域ごとにトコノマの設置や仕様選択の傾向が相違し,仕様の使い分けには先祖祭祀と接客・親族儀礼の場の対比が重視された。
  • 重伝建地区におけるケーススタディ
    藤平 眞紀子, 向井 洋一, 増井 正哉
    2011 年 37 巻 p. 157-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    重要伝統的建造物保存地区である橿原市今井町において,空き家の管理と保存・活用について検討した。空き家の問題は全国の歴史的市街地に共通する課題である。空き借家家主へのヒアリング調査,空き借家の微動計測による構造調査,空き借家の劣化診断および温湿度測定を行った。そして,空き家の管理状況を把握するとともに,構造部材の劣化状況を知り,置かれている環境および構造的問題点を検討した。さらに,今後建物を活用していくために必要な補修のあり方,活用後の管理のあり方について考察した。
  • 支援の全国的把握と先進モデル・神奈川方式の提示
    葛西 リサ, 大泉 英次
    2011 年 37 巻 p. 169-180
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では 1)民間シェルターによる DV被害者向け住宅確保支援の全国的状況,2)生活保護を DV被害者支援の軸に据え行政との連携のもと極めて合理的な支援を展開する神奈川県の事例について明らかにした。DV防止法制定以降,行政と民間との連携による支援が盛んに言われてきたが,未だ多くの民間シェルターが無償で被害者を掬い上げ,限られた選択肢の中,民間主導で自立支援を行っている事実が確認された。他方,神奈川県は民間,県,市町村の役割を明確にし,県内同一のルールのもと合理的な支援を実現していた。但し,生活保護を活用しても行き場の定まらない重篤なケースが多く確認され,これに対する支援整備を急務の課題として挙げた。
  • 墨田区を中心として
    蛭間 基夫, 鈴木 浩, 坂田 実花, 小池 青磁
    2011 年 37 巻 p. 181-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    住宅改善は高齢者が住み慣れた地域社会で在宅生活を継続するための有効な支援であり,その介入において理学療法士はその役割や職能の重要性が高いことが指摘されている。本研究は住宅改善における理学療法士の役割や専門性を理学療法士自身により考察することを目的としている。方法は住宅改修を実施した高齢者を対象とした調査と全国の理学療法士の住宅改善への介入に関する実態と意識調査である。本調査の結果から,理学療法士は介入時に果たすべき役割が作業療法士と共通しているが,その際の動作分析や日常生活活動に関する視点において,各々に明確な専門性を有していることが明らかとなった。
  • 再入居高齢者の住棟まわりでの生活変化に着目して
    室﨑 千重, 神吉 優美, 稲地 秀介
    2011 年 37 巻 p. 193-204
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    近所つきあいを継承する再生団地の空間計画への手がかりを得ることを目的として,団地建替え後に再入居した高齢者を対象として,建替え団地空間の居住者評価と住棟まわりでの近所つきあい変化について調査を実施した。その結果,バリアフリー環境への評価は高い一方で,生活が寂しくなったと感じる高齢者が存在した。一因に近所つきあいの減少がある。建替え後に顔見知り人数は増加傾向であるが,団地の空間変化により住棟まわりで偶然に出会う機会が減少したことが,近所つきあいの減少に繋がる側面が明らかになった。再生団地においては,小集団に対応できる親密な空間・ゆるやかな共有領域を意図的に計画し補完することが必要である。
  • マンションの新たな管理及び再生制度に関する立法提言のために
    鎌野 邦樹, 藤巻 梓, 大野 武, 花房 博文, 舟橋 哲
    2011 年 37 巻 p. 205-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    マンションを長期にわたり維持させるためには,そのための建物の構造や建築技術と共に継続的な管理が不可欠である。その管理を担う者は,終局的には区分所有者である。それでは,第一に,各区分所有者には,相互に契約がなくても,建物等の「長寿命化」の権利・義務があるのか。つまり,各区分所有者は,相当な期間にわたり建物等を適正に維持・管理していく権利を有し義務を負うのか。第二に,「長寿命化」の後(建物の「寿命」が尽きた場合)の区分所有関係はどうなるのか。本研究では,現行法上これまで必ずしも明らかにされていないこれらの問題を,比較法的に考察し,それを踏まえて,わが国における立法上の提案をする。
  • 分離測定によるガス・粒子・ハウスダスト中の分配特性
    並木 則和, 鍵 直樹, 大澤 元毅, 西村 直也
    2011 年 37 巻 p. 215-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    フタル酸ジエチルヘキシルのような準揮発性有機化合物(SVOC)は,喘息だけでなく化学物質過敏症の原因になっている。室内空気中のSVOCは,蒸気圧が低いために単体の分子(ガス相)あるいは,浮遊粉塵上(粒子相)の双方に存在する。しかし,これらの分配係数の測定法が必ずしも確立されているとは言い難い。そこで本研究では,超音波アトマイザで関東ロームの試験浮遊粉塵を発生させて,拡散チューブを用いてガス相および粒子相のDEHPの分離測定を行うことを試みた。その結果の1つとして,特定の条件下においてDEHP蒸気の試験浮遊粉塵への吸着特性はラングミユア型を示すことが示唆された。
  • CFDによる解析と地域気候・デザイン分析からのアプローチ
    宇野 勇治, 太田 昌宏, 堀越 哲美
    2011 年 37 巻 p. 225-235
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    地域環境に適応した住宅の開口部配置や室内通風についてのデザイン手法の整備が求められている。本研究では,民家の開口部と地域風との関係を考察するとともに,現代住宅の開口部形態の特性を分析し,さらにCFD解析を用いて現代住宅を対象とした室内気流状態に関するシミュレーションを行うことを目的とした。伝統民家を抽出し,開口部のつくりが地域風況を考慮して設けられていた様子を考察した。現代住宅における開口部の形態および配置方位について類型化を行い,1階,2階それぞれ6群に区分した。モデル化した現代住宅についてCFD解析を行い,対象モデルにおいて平均開口率と室内平均流速の間に有意な関係がみられることを確認した。
  • SI化による施工合理性向上効果等の実態調査
    稲山 正弘, 大澤 一実, 蟹澤 宏剛, 相馬 智明, 大澤 宏實
    2011 年 37 巻 p. 237-248
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    木造軸組工法住宅の施工,特に大工を中心とした内装造作工事における生産性を確認するため,「毎分写真撮影評価法」を開発・試行した。その上で,構法・施工手順の異なる2棟の新築現場について施工状況調査と比較を行った。2現場とは,間仕切耐力壁があり,間仕切壁先行施工・床後張施工の従来型方式による「一般棟」と,間仕切耐力壁がなく,床先行施工・間仕切壁後施工の「SI分離型棟」であり,施工手順の違いによる生産性の違いを確認した。その結果,SI分離型施工において一定の施工合理化効果が認められた。また,本評価法を用いて,工具の使用量推移や,工種ごとの要素作業量の集計などが可能であることを示し,その汎用性を示した。
  • 荒木 康弘, 鈴木 香菜子, 権藤 智之, 米澤 修二
    2011 年 37 巻 p. 249-260
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では国産材利用促進を意図した等断面構法用金物を開発し,その構造的性能を構造実験によって解明するとともに開発時に想定した資源循環に対する効果を木質資源循環フロー調査によって検証し構法を改良する方向性を明らかにする。この金物により120 ㎜角程度の等断面製材のみを構造に用いた木造住宅生産が可能になり,製材の安定供給や乾燥品質向上,コスト削減にも効果をもつと考え開発を行った。効果の検証では,兵庫県丹波・篠山地域において木材の素材生産の段階から使用,再資源化の段階までの木質資源循環フロー全体を対象とした聞き取り調査を行い,開発時に見込んだ効果を検証するとともに県産材利用の現状や課題を把握した。
  • 非焼成土ブロックの組積耐力壁への利用
    輿石 直幸, 山下 保博, 佐藤 淳, 前浪 洋輝, 川﨑 善則, 上村 浩之
    2011 年 37 巻 p. 261-272
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,資材調達や環境負荷などの面で優位な土素材を対象として,各地で入手可能な粘土を用いて建築現場で非焼成土ブロックを製造し,これを用いて組積耐力壁を構築する技術を開発したものである。材料実験では,粘土に各種の添加材を加えて土成形体の圧縮強度に対する効果を確かめたうえで,これらの中から増強効果が高く環境影響の少ない酸化マグネシウムを選定し,建築現場での製造を想定した成形や養生の条件の影響および調合の影響を明らかにした。構造実験では,積上げ面に凹凸を持つ組積壁の要素試験体を作製し,せん断耐力を確認した。施工実験では,実際の建築現場において土ブロックを製造し,量産可能であることを確認した。
  • 豊崎長屋における耐震改修工事と住生活の評価
    小伊藤 亜希子, 小池 志保子, 桝田 洋子, 綱本 琴
    2011 年 37 巻 p. 273-284
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    大阪市北区に現存する戦前長屋群を対象に,長屋居住における生活文化の価値を明らかにし,持続的居住を実現する再生手法を実践的社会実験によって示した。(1)居住世帯の変遷と増改築の経歴を明らかにした上で,居住継承が困難になっている長屋の住生活と居住空間の今日における価値と課題を明示した。(2)伝統的木造住宅に適した耐震改修工法を初めて長屋で施工し,その有効性を検証するとともに,資金面からみた借家経営継続の展望も示すことができた。(3)全面的な改修を行った住戸では,減築による裏庭の復活をはじめ,長屋本来の特性を生かして再生した。その結果,再生長屋には多様な若年世帯が入居し,入居者による住生活評価を通じて,長屋における持続的居住を実現できる将来展望を示した。
  • ジェンダー・階層・住宅所有形態に注目して
    川田 菜穂子, 平山 洋介
    2011 年 37 巻 p. 285-296
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,家族の持続とその持家取得を前提としてきた住宅政策のもと,離婚と住まいはどのような関係を形成するのかを明らかにするものである。アンケート調査とヒアリング調査の結果から,離別者は離婚前から持家を取得している割合が低く,離婚に伴い多くが借家間,持家から借家へ,借家から親の持家への移動を経験していること,それら住宅経歴には,ジェンダー,社会経済階層による差異がみられること,離婚に伴う住まいの変化が,住宅の物質水準の低下,コミュニティ・ネットワークの喪失,資産形成の困難を伴っている実態を明らかにした。
  • 理想の住空間としての建築・しつらい・作庭
    森田 直美, 赤澤 真理, 伊永 陽子
    2011 年 37 巻 p. 297-308
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,『源氏物語』の舞台となった寝殿造の空間が,中近世を通してどのように理解されたか,中近世における『源氏物語』の住宅考証史を通して明らかにする。15世紀『花鳥余情』は, 同時代の住空間を背景に,文献上で寝殿造の復原を試みる。15世紀『源氏物語人々居所』及び17世紀『十帖源氏』は,六条院の作図を試みるが,寝殿と対からなる構成を描出できていない。しかし,そこには当時の人々の『源氏物語』の庭と庭を舞台とした遊興への関心を見出すことができる。その後,18世紀後半松岡行義著『源語図抄』『源氏類聚抄』は,裏松固禅『大内裏図考証』『院宮及私第図』を典拠とし,寝殿造像を視覚的に表現することが可能となった。
  • 伊香賀 俊治
    2011 年 37 巻 p. 5-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     日本建築学会,建築研究所,国土交通省などで1990年以来,研究開発されてきた建物のライフサイクル評価(LCA)手法の概要と,建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の採点システムに連動した簡易LCA ツールが日本建築学会のLCA ツールを活用して開発され,LCA のさらなる普及が図れてきた経緯を紹介した。さらに,2010年3月の地球温暖化対策基本法案に盛り込まれたわが国の中期(2020年)と長期(2050年)の温室効果ガス削減目標を達成するためのロードマップに記載されたライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅評価ツールの最新状況を概説した。
  • 岩船 由美子
    2011 年 37 巻 p. 13-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     我が国においては,住宅部門における省エネルギーは,二酸化炭素削減のための重要な施策のーつとして掲げられている。本論文では住宅におけるエネルギー消費の現状と将来の動向,各種施策の適用可能性,実現のための政策的課題等について考察する。世帯当たりの家庭用エネルギー消費量は1995年頃をピークに頭打ちとなっており,将来的に世帯教が減少に転ずると見込まれていることから,家庭部門全体としても,追加的な対策なしにいずれは減少に向かうものと考えられる。しかし大幅な二酸化炭素削減を実現するためには,太陽光発電等のエネルギー供給システムや高効率給湯システムの大規模導入が必要であり政策による誘導が重要となってくる。
  • 鎌田 紀彦
    2011 年 37 巻 p. 21-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     北海道から始まった高断熱住宅は,日本の住宅に大きな影響を及ぼしてきた。しかし,その普及は遅く,日本の住宅におけるエネルギー消費は,増え続けている。そして,住宅の室内環境は,住宅の性能が不十分なため低いレベルにとどまっている。高断熱住宅の技術開発の経緯を振り返り,整理した上で,これからの日本の住宅が 向かうべき方向と具体的な方策について考察する。
  • 小玉 祐一郎
    2011 年 37 巻 p. 33-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     住宅は,周辺の環境との応答の上に築かれる。気候風土や地域社会の違いは,その応答の形に影響を与え,多様なコミュニティと 建築の形を生み出してきた。我が国のような温暖地では,古来「夏を旨」とする開放的な空間構成を特徴としてきたが,20世紀の人工環境技術の普及は,次第に室内空間の閉鎖化を促してきた。近年の省エネの要請はさらに閉鎖化の傾向を強めているようにもみえるが,一方で,環境との応答をしながら,省エネを達成し,かつ快適な室内気候を形成しようというパッシブデザインの動きがある。本論では,現在のパッシブデザインの位置付けを試み,温暖地における環境と応答する住宅の意義と可能性を論じる。
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