抄録
健常な雑種成犬28頭について、ファイバーオプティック圧モニター法による脳脊髄液圧の測定を検討した。ファイバーオプティックカテーテルは、経皮的に穿刺針を用いて頸部および腰部脊髄のクモ膜下腔に挿入した。頸部の脳脊髄液圧は最高12.0 mmHg、最低2.0 mmHg、平均値±標準偏差6.11±0.54 mmHgの値を示し、従来から報告されている測定値と近似した値であった。一方、腰部の脳脊髄液圧は最高12.0 mmHg、最低2.0 mmHg、平均値±標準偏差5.93±0.55 mmHgであった。頸部と腰部の脳脊髄液圧間には正の相関が認められたが、それぞれの脳脊髄圧と平均動脈圧との間には相関性は認められなかった。また、エピネフリン投与による動脈圧上昇に伴う脳脊髄液圧の変化を観察した。動脈圧の上昇に伴った頸部と腰部の脳脊髄液圧の有意な変化は認められなかった。以上の結果から、犬における頸部および腰部脊髄の脳脊髄液圧は、ファイバーオプティック圧モニター法により安定的かつ連続的に測定することが可能と推察された。