抄録
頭蓋内肥胖性星細胞腫の猫に対し、外科的治療および放射線療法を施した症例を報告する。症例は9歳齢、未去勢雄のアメリカンショートヘアで、初診の3ヶ月前から食欲低下、意識状態の低下を認め、一時的な前肢歩行障害が認められた。MRI検査では、右側頭頂・後頭葉に、不均一な信号強度を示し、造影剤で不均一に増強される境界不明瞭な腫瘤性病変を認め、び漫性星細胞腫が疑われた。腫瘤は右側脳室を圧排しており、右帯状回ヘルニア、右後頭葉のテント切痕ヘルニアおよび小脳ヘルニアが認められた。第31病日には歩行困難、右斜頚が認められるようになり、意識状態が昏迷となったため、側方吻側テントアプローチにより腫瘤を切除し、手術翌日より意識状態、歩行状態の改善が認められた。腫瘤の病理組織検査では肥胖性星細胞腫と診断され、術後放射線治療として計45 Gyの照射を21日間に渡って行ったものの、術後95日目に痙攣発作の重積により死亡した。