獣医麻酔外科学雑誌
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41 巻, 1 号
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原著
  • 伊東 輝夫, 西 敦子, 池田 文子, 水永 夕葉, 藤本 誠一郎, 椎 宏樹
    2010 年 41 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    免疫介在性多発性関節炎と診断された16例の臨床的特徴と長期治療成績を検討した。若-中年齢(2-8歳;14例)、小型犬(<7 kg;12例)、膝関節(15例)・手根関節(9例)での好発傾向が認められた。臨床的な主な異常所見として、歩行異常(16/16例)、発熱(11/16例)、関節液中の好中球増加(12/12例)が認められた。X線検査におけるびらん性関節炎(EPA)の特徴が10例で認められ、他の6例は非びらん性関節炎(NEPA)に分類された。EPAの10例はすべて雌で、6例はミニチュア・ダックスフントであった。プレドニゾロンを用いた導入治療(1.25-3.4 mg/kg/day)に全例が反応して臨床的改善がみられ、ほとんどは低用量(0-0.9 mg/kg/day, 中央値0.25)で維持できていた。NEPAの6例のうち、特発性NEPAに分類された4例では投薬終了後も21-47ヵ月間再発することなく寛解が維持されている。長期追跡できたEPAの7例中6例は低用量プレドニゾロンの持続投与で良好なQOLが維持されており、別の1例は飼主の希望で休薬したが歩行機能は維持されている。
  • 片山 泰章, 深井 和紘, 五十嵐 宏之, 谷 健二, 百田 豊, 神志那 弘明, 佐藤 かつ江, 高橋 公正, 多川 政弘
    2010 年 41 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    犬の腎移植において従来から用いられているシクロスポリン、アザチオプリンおよびプレドニゾロンによる免疫抑制法は、肝毒性や骨髄抑制等が副作用として問題となる。本研究ではこれらの問題点を改善するために、6頭の腎移植犬において、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェティルおよびプレドニゾロンによる3剤併用免疫抑制療法の早期急性拒絶反応抑制効果およびその安全性について検討した。6頭中5頭が90日の試験期間を通して生存したが、残り1頭は術後9日目に原因不明のまま死亡した。Banff’07の移植腎病理診断基準では、生存した5頭中3頭には拒絶反応を示す所見は認められなかった。残りの2頭は急性拒絶反応を呈したが、同時に尿路感染の併発も認められた。生存した全頭において十二指腸粘膜下織への軽度-中等度の炎症細胞浸潤および腸分泌腺管腔の拡張が認められたが、それらに関連する臨床症状は認められなかった。本研究で用いた3剤併用免疫抑制療法は、犬の腎移植における早期急性拒絶反応抑制に有効で、かつ重篤な副作用も認められないことより、本プロトコールは従来の免疫抑制プロトコールの代替療法として有効である可能性が示唆された。
短報
  • 井尻 篤木, 去来川 肇, 根本 洋明, 吉木 健, 嶋崎 等, 前谷 茂樹, 峯岸 則之, 中村 晃三, 中出 哲也
    2010 年 41 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    MRIで診断した犬の脳底部トルコ鞍周辺の脳腫瘍に対し、その画像所見、腫瘍の形状から手術のアプローチ法を検討した。下垂体前方背側に存在する血管周囲細胞腫には背側方向から大脳半球を経由するInterhemispheric approach(IHA)を選択し、腫瘍を摘出した。また下垂体およびその背側に存在する下垂体腺癌には腹側方向から蝶形骨を経由するアプローチ(TSA)を選択した。その結果、それぞれ脳底部における腫瘍を摘出することができ、今後、脳底部腫瘍の摘出に対してIHAおよびTSAは有用なアプローチ法と思われた。
  • 相川 武, 高橋 大志, 藤田 宏志, 柴田 光啓, 南 毅生
    2010 年 41 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    頭蓋内肥胖性星細胞腫の猫に対し、外科的治療および放射線療法を施した症例を報告する。症例は9歳齢、未去勢雄のアメリカンショートヘアで、初診の3ヶ月前から食欲低下、意識状態の低下を認め、一時的な前肢歩行障害が認められた。MRI検査では、右側頭頂・後頭葉に、不均一な信号強度を示し、造影剤で不均一に増強される境界不明瞭な腫瘤性病変を認め、び漫性星細胞腫が疑われた。腫瘤は右側脳室を圧排しており、右帯状回ヘルニア、右後頭葉のテント切痕ヘルニアおよび小脳ヘルニアが認められた。第31病日には歩行困難、右斜頚が認められるようになり、意識状態が昏迷となったため、側方吻側テントアプローチにより腫瘤を切除し、手術翌日より意識状態、歩行状態の改善が認められた。腫瘤の病理組織検査では肥胖性星細胞腫と診断され、術後放射線治療として計45 Gyの照射を21日間に渡って行ったものの、術後95日目に痙攣発作の重積により死亡した。
  • 田中 利幸, 秋吉 秀保, 井尻 篤木, 嶋崎 等, 青木 美香, 大橋 文人
    2010 年 41 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    未避妊雌、10歳齢のゴールデンレトリーバーが元気消失、痙攣を主訴に来院した。血液検査では明らかな異常は認められず、MRI検査により前頭葉に腫瘤の存在が認められた。術中MRIを併用して経前頭洞開頭術により、腫瘤を切除した。切除した腫瘤は病理組織学的検査にて髄膜上皮型髄膜腫と診断された。腫瘍摘出後、再発が認められたものの、本症例は外科手術単独で707病日と長期生存した。
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