抄録
11歳齢、雄のゴールデン・レトリーバーが線維腫と診断された前頭部腫瘤の再発を主訴に来院した。腫瘤は頭蓋骨への固着が著しく、眼窩へも浸潤しており、高分化型線維肉腫と再診断された。X線CT所見に基づき、頬骨突起と前頭骨の一部を含めて腫瘤を切除するとともに、圧迫され変形した眼球を摘出した。切除後の摘出部位の修復は、側頭筋を剥離し反転させた被覆と多孔性ゼラチンスポンジの充填とした。術後、一時的な皮下気腫と皮膚発赤が認められたが経過は良好であり、術後約1年3ヵ月を経過した時点で腫瘍再発ならびに転移の徴候は認められていない。大型犬、とくにゴールデン・レトリーバーの頭部腫瘤については、病理組織学的に良性な線維腫と診断された場合であっても、高分化型繊維肉腫の可能性を考えた対応が必要と思われる。