獣医麻酔外科学雑誌
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犬の急性膵炎に併発した総胆管閉塞に対する胆嚢十二指腸吻合術の1例
中山 正成辻岡 ひとみ田中 宏丹羽 淑子竹原 徳馬小笠原 成郎
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1994 年 25 巻 2 号 p. 43-48

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抄録
犬の急性膵炎の治療法としては, 絶食, 輸液療法, 抗生物質の投与など内科療法が主となるが, 総胆管閉塞を併発した場合, 外科的処置の必要性も考慮しておかなければならない。
本報告で著者らは, 急性膵炎の発症後, 総胆管閉塞症を継発した10歳, 雄のヨークシャテリアに対して胆嚢十二指腸吻合術を行った。術後のメトリザマイドによる消化管造影で, 十二指腸内容は広い吻合部を通って胆嚢内に入り, その後スムーズに十二指腸へと排泄されていることが確認された。患犬には術後3週間, H2プロッカーのシメチジンと抗生物質のセファロチンの投与を行った。また, 胆嚢内での食塊の停滞と膵炎の再発を防ぐため, 処方食として線維とタンパク質を制限した食餌 (i/d, Hills) を与えた。
術後, 患犬は元気, 食欲共に改善し, 血液所見にも著明な改善が見られた。術後18ヵ月経過した現在も, 膵炎の再発や胆嚢炎と思われる臨床症状は認められていない。以上より, 胆嚢十二指腸吻合術は, 本症例において極めて有効な術式であることが確認された。
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