2018 年 2 巻 2 号 p. 30-33
未去勢雄、7 歳齢のポメラニアンが僧帽弁修復術(MVR)のために来院した。初診時の検査にてACVIM 分類ステージB2 の僧帽弁閉鎖不全症と診断し、体外循環下でMVR を実施した。手術は問題なく行なわれ人工呼吸器から離脱したが、ICU に移動した1 時間20 分後に突然の呼吸停止を確認した。その際の血液検査において重度の低血糖が認められたため、25%ブドウ糖液を1 ml/kg 緩徐に静脈内投与した。その後速やかに呼吸が再開し、以降の臨床状態は安定化した。術後2 ヵ月現在、一度も低血糖徴候は認められず、無投薬で良好に経過している。医学では、心臓外科の周術期に高血糖に陥ることが多く、これが手術予後を悪化させることが知られている。一方、犬では心臓手術周術期の血漿グルコース濃度の動態については不明な点が多いため、今後さらなる調査と研究が必要であり、高血糖のみならず低血糖にも注視して慎重に血糖を管理する必要性があることが示唆された。