粘液腫様僧帽弁疾患と診断されていた12 歳齢、避妊済みチワワが虚脱の主訴にて来院した。各種検査にて肺水腫、心膜腔内貯留液、右心房の虚脱、心房心室内腔容積の減少を呈していた。また、過去の検査所見と比較して僧帽弁逆流が減少している事も認めた。以上の所見より、左心房破裂が原因により心タンポナーデに陥っていると判断し、内科治療を開始した。左心房破裂部位からの持続出血をまねく可能性を危惧し、心膜穿刺は行わなかった。数時間後に臨床症状の改善を認め、各種検査にて心タンポナーデから改善していることを確認した。第2病日、再度虚脱し各種検査にて低酸素性肝炎の可能性とともに心タンポナーデが再発したことを認めた。今後も左心房破裂による心タンポナーデの再発が持続する可能性を危惧し、僧帽弁逆流による左心房破裂の再発を防ぐことを目的とした僧帽弁修復術を行った。術中所見にて左心房に破裂部位を認めたが凝血により止血がなされていた。破裂部位の周囲組織が脆弱である可能性があったため破裂部位に対する直接的な修復処置は行わなかった。術後18 ヵ月経過しているが術後の左心房破裂の再発はなく粘液腫様僧帽弁疾患による心不全の増悪も認めず良好に経過している。粘液腫様僧帽弁疾患に起因する左心房破裂に対して早期の僧帽弁修復術の実施は左心房破裂の再発を防ぐ根治的手段となる可能性がある。