2006 年 10 巻 1 号 p. 21-28
1994~1995年に石川県のと畜場において関節炎罹患豚から分離された血清型1aでアクリフラビン耐性の豚丹毒菌(以下野外株)の病原性と遺伝学的性状が生ワクチン製造用のアクリフラビン耐性弱毒株(以下生ワクチン株)と比較された。その結果,18野外株のうち12株が生ワクチン株と同程度のアクリフラビン耐性を示した。その12株のうち4株はマウスに対して生ワクチン株と同程度の病原性を示した。上記の12株の中からアクリフラビン耐性度とマウスに対する病原性が生ワクチン株と同程度の7株を選んで豚に接種したところ,1株だけが生ワクチン株と同程度の病原性を示した。さらに,この1株はパルスフィールド電気泳動(PFGE)においても生ワクチン株と同じパターンを示した。一方,他の6株は豚に対してより強い病原性を示し,かつ,PFGEでは別の4種のパターンを示した。これらの結果から,アクリフラビン耐性で弱毒の豚丹毒菌が野外に存在し,それらは病原性と遺伝学的性状において多様性のあることが示唆された。また,生ワクチン株と野外株の識別にアクリフラビン耐性以外の適切なマーカーが必要であると考えられた。