獣医疫学雑誌
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原著
国内農場における繁殖雌豚への2回交配と3回交配の経済的利益の比較
高井 康孝佐々木 羊介纐纈 雄三
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2010 年 14 巻 1 号 p. 47-54

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抄録
本研究では雌豚への1回目種付け時と再種付け時での、2回と3回交配の経済的な利益の比較を行った。繁殖成績は117農場での102,553種付け記録を利用した。発情時期での1種付けには,1回以上の交配が行われている。1種付けあたりの費用と利益の経済モデルは,繁殖成績と経済的な仮定の値で作られた。離乳豚1頭あたりの価格は,市場価格から肥育コストである飼料費,ワクチン費,治療費,屠場までの運賃,屠場経費,労働費そして電気・水道・光熱費を差し引いて推定された。感受性分析は,2回交配における分娩率を上げる中で,3回交配による利益を追い抜く閾値を決定するようにしてなされた。初回種付けグループでは,3回交配された未経産豚と経産豚は2回交配された未経産豚と経産豚より,分娩率も分娩時生存産子数も上回っていた。再種付けグループでは,2回と3回交配の間で,分娩率も分娩時生存産子数にも差はなかった。離乳豚1頭あたりの価格は,101.1ドルと推定された。初回種付けの未経産豚と経産豚では,3回交配における純利益が,2回交配を上回った。それで,利益を最大にするために,日本では初回種付けされる雌豚には3回交配を,再発情した雌豚には2回交配を奨める。なお,感受性分析の結果は,生産者が2回交配で分娩率を1%上昇すれば,2回交配による利益が,3回交配による利益を超えることを示唆している。
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© 2010 獣医疫学会
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