抄録
本研究は,生産農場における妊娠後期の雌豚と授乳豚の蹄損傷の発生を比較すること,蹄損傷と産次,初交配日齢,及び生存時間との関連を分析することを目的とした。繁殖雌豚一貫経営農場に,2007年から2008年に6回訪問し,授乳豚舎で飼育されている妊娠後期の雌豚と授乳豚の蹄損傷を観察した。1雌豚当たり,8つの蹄において,それぞれ7部位に4段階の蹄損傷スコア (0, 1,2, 3) を記録した。総蹄損傷スコア (TPLS) は,8つの蹄7部位における蹄損傷スコアの合計と定義した。雌豚はTPLSの上位10パーセンタイルによって,低TPLS (0から5) と高TPLS (6以上) に分類した。統計分析には,混合効果モデルと生存時間分析を用いた。分娩クレートで飼育されている雌豚629頭の内,64.4%は少なくとも1つ蹄損傷を持っていた。平均TPLS (±SEM) は2.6±0.15であった。妊娠後期の雌豚は授乳豚よりもTPLSが高かった (4.1±0.42 vs. 2.1±0.14 ; P<0.05) 。さらに妊娠後期の雌豚と授乳豚のいずれにおいても,TPLSは高い産次でより高くなった(P<0.05) 。初交配日齢とTPLSは,妊娠後期の雌豚 (P=0.08) と授乳豚 (P>0.10) において関連がなかった。生存時間とTPLSは,妊娠後期豚と授乳豚において関連がなかった(P>0.10) 。動物福祉向上の観点から,生産者は雌豚の重篤な蹄損傷を発見するために,分娩クレートで雌豚の蹄を頻繁に確認することが望ましいと考えられる。