獣医疫学雑誌
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原著
生産農場における妊娠豚への分娩誘発剤の使用とその繁殖成績
市川 大樹纐纈 雄三
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2011 年 15 巻 1 号 p. 15-21

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抄録
本研究の目的は,分娩誘発剤の使用記録を基に農場を2グループに分け,各農場グループで誘発分娩の母豚(IF母豚)と自然分娩の母豚(NF母豚)の繁殖成績を比較することとした。データベースより,19農場を分娩誘発剤を常用している農場として抽出した。生産記録は,2008年における母豚9,703頭の18,792回の分娩記録を含んだ。19農場を妊娠期間(GL)が116日以上であるIF母豚の割合(50%以下または50%より多い)を基に,‘Early Farrowing’農場(11農場)と‘Late Farrowing’農場(8農場)の2グループに分類した。母豚はIF母豚またはNF母豚の2グループに分類した。繁殖成績の比較は,各農場グループ,産次および妊娠期間毎に分析した。‘Early Farrowing’農場において,生存産子数は,全ての産次および妊娠期間でIF母豚とNF母豚間で差がなかった。しかし,‘Late Farrowing’農場ではGL114日である6産次以上のIF母豚は,NF母豚と比べ生存産子数が1.5頭少なかった(P<0.05)。また,GL115日以上であるIF母豚は,3産次以上でNF母豚と比べ生存産子数が0.9頭またはそれよりも少なかった(P<0.05)。他の産次および妊娠期間では,生存産子数はIF母豚とNF母豚間で差がなかった。両農場グループにおいて,補正21日齢一腹体重,離乳後初回交配日数,分娩割合は,全ての産次と妊娠期間でIF母豚とNF母豚間で差がなかった。母豚の生存産子数を改善するために,分娩が遅れている母豚は注意深く観察し,介助分娩を伴った分娩誘発が行われるべきである。
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© 2011 獣医疫学会
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