飼養鳥および野鳥の救護個体の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)サーベイランス体制と防疫対策について調査した。飼養鳥の簡易検査は動物園水族館で実施されることが多かったが,遺伝子検査機関が決まっていない自治体は30%以上みられた。動物園水族館の約40%が野生動物の救護個体を受け入れており,HPAIが国内発生した時点でその80%以上の施設が受け入れを停止した。一方,野生動物の救護施設では,施設から半径30km圏内でHPAIが発生した場合でも50%以上の施設が救護された野生鳥類を受け入れていた。動物園水族館では,HPAI感染が疑われる飼養動物は隔離飼育される傾向にあり,HPAIが確定した時点で安楽殺が検討されることが多かった。野鳥のHPAIサーベイランスでは,家きんや飼養鳥でのHPAI発生よりも前に野鳥でHPAIウイルスを検出することが必ずしもできていないことを鑑みると,動物園水族館は国内におけるHPAIが発生の有無に関わらず,渡り鳥の飛来時期に野鳥の救護を停止することが望ましい。飼養動物におけるHPAIの感染防止対策や封じ込めを効果的に実施するには,自治体と動物園水族館など関係者間の定期的な関連手順の確認や,自治体内での遺伝子検査機関の確保を推奨する。また国や関係機関は,動物園水族館や野生動物の救護施設を支援するために,移動式の隔離施設やリスクマネジメント手法の整備が求められる。