日本の近隣諸国ではアフリカ豚熱(以下ASF)が蔓延し,畜産業に壊滅的な影響を及ぼしている。主な感染経路は,感染した豚・イノシシとの直接的・間接的接触であるが,感染豚由来の豚肉や豚肉加工品も感染源としてリスクをもたらしている。日本では,家庭や外食産業から排出される生ごみは,地方自治体のごみ計画収集業務を通じて処理されている。本研究では,全国の自治体を対象に,家庭や外食産業から排出された生ごみを介しイノシシがアフリカ豚熱ウィルス(ASFV)に暴露され,最終的に家畜豚にASF感染が生じるリスクがあるかどうかを調査した。日本の生ごみ処理方法は自治体によって異なり,焼却,埋却,堆肥化,固形燃料化,エコフィード製造,家庭処理などがある。調査の結果,北海道および沖縄県の一部(北海道夕張市および美幌町並びに沖縄県竹富町)には,焼却せずに生ごみを埋める自治体があった。北海道ではイノシシは生息していないことから,夕張市や美幌町における生ごみを介したASFV感染のリスクは無視できると推定された。沖縄県竹富町西表島では野生イノシシが公共コンポストに廃棄された生ごみを介してASFVに暴露され,感染するリスクは無視できないと推定され,さらに,家畜豚における発生リスクも無視できないと推定された。一方,これら以外の自治体では,生ごみは直接埋却処分されていないか,イノシシが生息してないことから,家庭や外食産業から排出された生ごみを介したイノシシや家畜豚のASFV感染リスクは無視できると考えられた。