2025 年 29 巻 1 号 p. 54-62
牛伝染性リンパ腫ウイルスは日本の牛群に広く浸潤している。ほとんどの感染牛は臨床上異常を示さないため,本病はこれまで経済的に重要ではないと考えられてきた。しかしながら近年牛伝染性リンパ腫による全部廃棄と体数は増加しており,経済的損失の大きさが示唆されている。本研究は北海道における乳用,黒毛和種,交雑種牛の牛伝染性リンパ腫由来全部廃棄による直接損失を定量化するために実施された。牛伝染性リンパ腫由来全部廃棄数は2017年1月から2021年12月までの北海道6か所,旭川市1か所,函館市1か所,計8か所の食肉衛生検査所における食肉衛生検査報告から収集した。北海道の食肉衛生検査所2か所では肉用牛の種類について報告されていないため,他の検査所の全部廃棄記録に基づきベイズ推定を用いて黒毛和種と交雑種の頭数を推定した。各牛種の標準販売価格を用いて月別直接損失を算出した。年間平均直接損失および調査期間全体の損失はそれぞれ2億3,980万円および11億9,899万円と推定された。