獣医疫学雑誌
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Infrequent-Restriction-Site PCR (IRS-PCR) 法による大腸菌O157分離株のDNAタイピング
村瀬 敏之大橋 美幸山井 志朗丸山 務
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2000 年 4 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

パルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) 法は分離菌株のDNAタイピング (型別) に用いられ, 志賀毒素産生性大腸菌O157におけるその有用性が認められている。しかし, PFGE法では型別できない菌株の存在が指摘されている。そこでこのような株を分類する方法として, 細菌のDNAを比較的高頻度で切断する制限酵素と比較的低頻度で切断する制限酵素が認識する塩基配列で挟まれた領域をPCR法で増幅し (Infrequent-Restriction-Site PCR; IRS-PCR) , そのDNA断片の多型性を泳動パターンで観察する方法を検討した。供試菌として食中毒患者, 原因食品, 関連施設などから分離された大腸菌O157の52株を用いた。制限酵素XbaI及びHhaIを用いて切断したDNAのIRS-PCRパターンにより12の型に, また, BlnI及びHhaIを用いて場合は14の型に分類された。このうちPFGEパターンにおいてそれぞれ固有の泳動パターンを示した18株は, IRS-PCRにおいて11種に分類されたが, PFGEでバンドパターンの得られなかった34株では3種にしか分類することができなかった。したがって, PFGEでバンドパターンの得られなかったこれらの株が遺伝的に近縁である可能性が示唆された。型別能はIRS-PCR法に比べPFGE法が優れているといえるが, 本法により菌株間のバンドパターンの比較が可能で, 使用する制限酵素の検討を行うことにより, PFGE法に代わる型別法として応用可能と思われた。

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