獣医疫学雑誌
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数量化理論II類を用いた細菌性食中毒の発生要因の解析
林谷 秀樹岩田 剛敏Alexandre Tomomitsu OKATANI斎藤 行生
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2003 年 7 巻 2 号 p. 79-84

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抄録

平成10年の食中毒統計資料を用いて, 細菌性食中毒のうち, 腸炎ビブリオとサルモネラを選び, 多変量解析のひとつである数量化理論II類により, これらの食中毒と他の食中毒とを判別できるかを試みた。
外的基準として腸炎ビブリオとそれ以外の細菌性食中毒に2大別し, 説明変数として, 発生年月, 患者数, 原因食品, 原因施設および摂食場所の5項目を用い, 数量化理論II類で解析した結果, 偏相関係数の値は原因食品 (0.501) と発生季節 (0.303) で高かったことから, 両者が腸炎ビブリオとその他の細菌性食中毒とを判別するのに大きい影響を与えており, 特に, 原因食品においては魚介類 (1.157) の, 発生季節については夏 (0.244) の判別係数が高いことから, これらが腸炎ビブリオ食中毒の発生に強く関連する要因であることが示された。また, 判別のよさを示す相関比は0.440と比較的高く, サンプルスコアを算出して正判別率を求めると, 81.4%と比較的高い正判別率を示した。しかし, サルモネラについても同様に解析したところ, 相関比が0.16と低く, 正判別率は72.3%に留まった。これらのことから, 腸炎ビブリオ食中毒については数量化理論II類により, 用いた説明変数だけで他の細菌性食中毒とある程度判別することが可能であったが, サルモネラでは難しいと思われた。

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