獣医疫学雑誌
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ベトナム・メコンデルタVACシステム (農畜水複合経営) の養豚部門における損耗の発生状況
鎌川 明美Ho Thi Viet Thu山根 逸郎谷口 稔明諸岡 慶昇
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2003 年 7 巻 2 号 p. 85-92

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抄録

ベトナム・メコンデルタではVACシステム (農畜水複合経営) が広く展開し, 各経営部門結合の高度化に関心が寄せられている。なかでも養豚は (1) 米の副産物, 遊休労働力ならびに庭先を利用した現金収入源, (2) 糞尿等副産物の再利用による物質循環の観点から農家経営の安定化に重要な役割を果たしている。一方, 経営的損失が高い伝染病の存在は知られているが, 農家にとっての損耗要因とその軽重を判断できる発生情報は殆ど得られていない。このため, VACシステムの代表村, タンフータン村4集落において, 飼養管理, 生産指標, 損耗の発生状況等について39戸の農家調査を2001年9月に行った。その結果, 哺乳豚から生後60日令までの子豚の事故率は約5%, その後肉用豚として出荷するまで1%であった。病徴としては浮腫病等敗血症死が疑われる急性死亡, 抗生剤に反応せず種々の症状を呈して致死する熱性疾患による重症例が認められた。母豚は栄養性, 感染病等による繁殖障害で若くして淘汰されていた。農家間を行き来する技術関係者, 人や車の往来が多い幹線沿いの農家に致死的な疾病の発生例が認められた。今後, 実験室診断による原因究明と, 損耗に関する年次的な変化を継続調査することが必要である。

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