2009 年 62 巻 2 号 p. 155-160
2003年3月,愛媛県興居島にて7頭のスジイルカ(Stenella coeruleoalba)が集団座礁し,そのうち6頭について全身解剖および病理組織学的検索を行った. 体長などからいずれも成体であることが推測された. 各個体の直接的な死因は,肺における重度のうっ血水腫と思われるが,これらの症例に共通する漂着の原因を示す所見は確定できなかった. 2例の甲状腺に,コロイドの大量貯留による波胞拡張および結節形成を伴う,いわゆる甲状腺腫に類似した所見が認められた. 脂皮内の有機ハロゲン化合物の分析の結果は,日本国内でこれまで報告されている海棲哺乳類における蓄積バターンとおおむね一致していた. 一部の有機ハロゲン化合物の高濃度の蓄積が認められた.