山口県の山麓で発見された野生雌イノシシ1例が衰弱死したため,病性鑑定を実施した結果,外部及び内部寄生虫性病変に加え,全身の細網内皮系細胞等に大型の好塩基性核内封入体を伴う病変が認められた.本症例は,免疫組織化学的染色,透過型電子顕微鏡,ウイルス学的及び遺伝学的検査とあわせて,イノシシの豚サイトメガロウイルス感染症と診断された.2011年度に山口県で捕獲されたイノシシ血清30例でさらに調査を行った結果,2例で本ウイルス遺伝子が確認された.これら3例(死亡1例と血清材料2例)の遺伝子配列をもとに分子系統樹解析を行った結果,それぞれが遺伝学的に離れており,県内のイノシシにおいて遺伝学的に多様なPCMVが感染している可能性が示唆された.本症例は,イノシシにおいて豚サイトメガロウイルス感染症と病理学的に初めて診断された事例である.