2015 年 68 巻 2 号 p. 112-116
北海道内の黒毛和種牛飼養農場で,子牛1頭が出生直後から起立不能,後弓反張及び意識混濁等の神経症状を呈し,生後3日目で死亡した.剖検では,小脳の大部分の領域で出血と軟化が認められた.肝臓及び腎臓に白色結節が散見され,脾臓に赤色結節が1カ所みられた.組織学的に,小脳では出血性壊死性炎症がみられ,病変部には多数の真菌がみられた.肝臓,腎臓及び脾臓には壊死を伴う真菌の増殖と肉芽腫の形成がみられた.真菌の形態と,小脳病変部のパラフィン切片から得られたDNAサンプルを用いた分子生物学的解析の結果より,本真菌はMortierella wolfii(M. wolfii)と同定され,本症例は新生子牛のM. wolfii感染症と診断された.