2015 年 68 巻 2 号 p. 128-133
11歳齢のミニチュア・ダックスフンドが2週間前からの原因不明の発熱を主訴に来院した.この症例は2週間前に元気消失と腹圧の上昇を主訴に他院を受診しており,発熱と白血球数の増加,ALPの上昇が認められていた.当院にてエコー検査を実施したところ,左側肝臓のシスト様腫瘤を確認したためFNAを行った.細胞診にて多数の好中球が認められたため,肝膿瘍と仮診断した.CT画像所見は人で報告されている肝膿瘍のものとほぼ同一であった.3日後に試験開腹を行ったところ,膿瘍は外側左葉基部に存在していたため,完全肝葉摘出術による切除及び胆囊摘出を行った.手術後には白血球数の異常な増加,眼振,低血糖,低アルブミン血症が認められたが,翌日夕刻より症例の状態は快方に向かい,手術から8日後に退院した.現在,術後208日を経過しているが,動物は再発もなく状態は良好である.