2016 年 69 巻 1 号 p. 36-40
3歳齢のザーネン種山羊が四肢の運動失調を呈し,予後不良のため病理解剖に供された.病理検索の結果,左腕神経叢と頸髄に異物肉芽腫が認められた.下行性運動路の神経細胞は中心性色質融解を呈した.左腕神経叢のパラフィン切片を用いた分子生物学的検索では,Setaria digitata(S. digitata)の遺伝子が同定された.以上より,S. digitata幼虫が血流を介して左腕神経叢と頸髄に到達し,下行性運動路の神経障害が運動失調に直接関与していたことが推察された.