本研究の目的は,豚流行性下痢(PED)の免疫組織化学的染色(IHC)で最も診断的価値が高い腸管の部位とPEDの検出に必要な頭数を調べ,IHCによる診断の特異性と有効性を改善することである.PEDを発症した18農場の56頭を調べた.腸管の各部位についてPEDウイルスに対するIHCを行い,農場ごと及び腸管部位ごとの陽性率を調べた.さらに小腸における絨毛と陰窩の長さの比(絨毛の萎縮比率)とIHCの陽性面積を計測した.陽性豚の割合は,1農場が33%(1/3頭)でほかの農場はすべて60%(3/5頭)以上であった.回腸下部はIHC陽性率が100%であり,最も高値であった.絨毛の萎縮比率は材料間に差はなく,陽性面積は回腸が空腸より有意に高かった(P<0.05).以上のことから,発症豚3頭の回腸下部についてIHCを実施することで,PEDの正確かつ効率的な診断ができると考えられた.