日本獣医師会雑誌
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小動物臨床関連部門
縦隔型T細胞性リンパ腫を呈した若齢犬の1例
山﨑 裕毅川畑 貴裕澤  真理子賴 昱璋矢吹 映三浦 直樹
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2016 年 69 巻 6 号 p. 333-338

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抄録

胸水と呼吸困難を主訴に10カ月齢,未避妊雌のミニチュアダックスが鹿児島大学附属動物病院を受診した.CT検査より,造影増強された前縦隔の腫瘤性病変と肝腫大が描出された.その後の細針生検とクロナリティー検査から肝浸潤を呈した縦隔型T細胞性リンパ腫と診断した.本疾患に対して多剤併用療法(UW-25)を試みたが,治療効果が得られなかった.そこで,腫瘍検体を定量性PCRによる遺伝子解析に供したところ,多剤耐性因子(ABCB1とABCG2)及び血管新生因子受容体(VEGFR2とPDGFRα)の遺伝子発現量が高値を示したため,VEGFR2とPDGFRαを治療標的因子と判断し,リン酸トセラニブとCCNUによる救済療法を開始した.その結果,腫瘍縮小がみられ,一般状態も良好に維持できたが,初診から36日目に呼吸困難を呈し,自宅で斃死した.死後の剖検より,T細胞性リンパ腫が確定された.

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