日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
小動物臨床関連部門
若齢猫にみられた犬糸状虫感染症の1例
市川 美佳桑名 正博高木 千亜季岡野 久美子二瓶 和美星 克一郎小野 憲一郎平尾 秀博
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 70 巻 2 号 p. 109-113

詳細
抄録

推定生後約3カ月齢時の夏に千葉県内で保護されて以降,完全な室内飼育下にあった8カ月齢,去勢雄の雑種猫が呼吸促迫のため来院した.好酸球数増多,胸部X線像で肺後葉血管の拡大とび漫性間質パターンを認めた.犬糸状虫感染症が疑われたが,心臓超音波検査で虫体は観察されず,また犬糸状虫抗原/抗体いずれも陰性であった.約2週間後には磁気共鳴画像(MRI)検査と脳脊髄液検査では原因が特定できない強直性の痙攣発作が認められた.さらに6週間後には重度の呼吸困難,体表リンパ節腫大並びに播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation : DIC)を発症し,対症療法を行ったが斃死した.病理解剖所見では,右心室と後大静脈に8隻の犬糸状虫を認め,リンパ節には重度の肉芽腫性炎症が,脳脊髄には非化膿性髄膜脳炎が認められた.呼吸器症状を示し,好酸球増多や胸部X線像でび漫性間質パターンが認められる猫では,1歳齢未満の若齢猫であっても,犬糸状虫感染症を疑う必要があると思われた.

著者関連情報
© 2017 公益社団法人 日本獣医師会
前の記事 次の記事
feedback
Top