日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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70 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 橋田 明彦, 山田 学, 光宗 仁美, 水戸 康明
    原稿種別: 短報
    2017 年70 巻2 号 p. 101-104
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

    3日齢の黒毛和種新生子牛が哺乳欲不振を呈したため診察したところ,下顎右第一切歯の歯肉内側に拇指頭大の腫瘤を確認した.肉眼所見では腫瘤は乳頭状でやや分節し,表面は黄褐色または灰白色で付着部はやや発赤していた.触診では弾力がなく軟らかであった.5日齢時に腫瘤を摘出し病理組織学的観察を行ったところ,腫瘤深部において大小の不規則な管腔を持つ小血管が高度に増生していた.おのおのの血管における血管内皮細胞数は正常な血管と比べて多く,卵円形で管内に突出していたが,細胞の異型性及び有糸分裂像は認められなかった.典型的な血管腫と比較して間質結合組織は疎で水腫様を呈しており粘液産生も確認された.以上の所見にもとづき,本症例を血管過誤腫と診断した.国内においては子牛の歯肉における発生報告がなく,貴重な症例であると考えられた.

  • 山本 佑, 綿村 崇宏, 北原 尚英, 秋山 倫子, 河上 友, 入部 忠, 水戸部 俊治, 中田 昌和
    原稿種別: 資料
    2017 年70 巻2 号 p. 105-108
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
小動物臨床関連部門
  • 市川 美佳, 桑名 正博, 高木 千亜季, 岡野 久美子, 二瓶 和美, 星 克一郎, 小野 憲一郎, 平尾 秀博
    原稿種別: 短報
    2017 年70 巻2 号 p. 109-113
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

    推定生後約3カ月齢時の夏に千葉県内で保護されて以降,完全な室内飼育下にあった8カ月齢,去勢雄の雑種猫が呼吸促迫のため来院した.好酸球数増多,胸部X線像で肺後葉血管の拡大とび漫性間質パターンを認めた.犬糸状虫感染症が疑われたが,心臓超音波検査で虫体は観察されず,また犬糸状虫抗原/抗体いずれも陰性であった.約2週間後には磁気共鳴画像(MRI)検査と脳脊髄液検査では原因が特定できない強直性の痙攣発作が認められた.さらに6週間後には重度の呼吸困難,体表リンパ節腫大並びに播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation : DIC)を発症し,対症療法を行ったが斃死した.病理解剖所見では,右心室と後大静脈に8隻の犬糸状虫を認め,リンパ節には重度の肉芽腫性炎症が,脳脊髄には非化膿性髄膜脳炎が認められた.呼吸器症状を示し,好酸球増多や胸部X線像でび漫性間質パターンが認められる猫では,1歳齢未満の若齢猫であっても,犬糸状虫感染症を疑う必要があると思われた.

  • 三重 慧一郎, 秋吉 秀保, 平田 翔吾, 島田 大, 井澤 武史, 田中 利幸, 林 聡恵, 大橋 文人
    原稿種別: 短報
    2017 年70 巻2 号 p. 114-119
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

    12歳3カ月,雄,体重5.2kgのミニチュア・ダックスフンドが肝臓の腫瘤を主訴に来院した.症例は膵炎の既往歴を有していた.初診時,症例は元気消失を呈していた.血液学的検査では白血球数の増加と血小板数の減少を認め,血液生化学的検査ではC反応性タンパク質(CRP)濃度の上昇を認めた.血液凝固系検査では特記すべき所見を認めなかった.超音波検査では,モザイク状に低エコー源性を示す2つの脾臓腫瘤及び肝臓実質と同程度のエコー源性を示す肝臓腫瘤を認めた.第2病日に脾臓の全摘出及び肝臓腫瘤の切除を実施した.脾臓の2つの腫瘤は膿瘍であり,膿汁の細菌培養により大腸菌が検出された.肝臓腫瘤は病理組織学的に結節性過形成と診断された.本症例では,膵炎が基礎疾患として脾膿瘍形成の一因となったと推測された.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 増田 加奈子, 湯藤 亜里
    原稿種別: 原著
    2017 年70 巻2 号 p. 121-124
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

    広島県内の食鳥処理場で処理された鶏の盲腸内容物のカンピロバクター分離率は12%(13/108)で,分離株はすべてCampylobacter jejuniと同定された.盲腸内容物からカンピロバクターが分離された鶏(以下,保菌鶏群)の処理時のと体やチラー水から本菌が分離された.盲腸内容物から本菌が分離されなかった鶏(以下,非保菌鶏群)の処理時のと体,チラー水のいずれからも本菌は分離されなかった.保菌鶏群の処理後に非保菌鶏群のと体から本菌が分離されたことから,交差汚染を受けている可能性が示唆された.また,冷却後のと体からも本菌が分離されたことから,現在の衛生管理方法ではカンピロバクター汚染は排除できないと考えられた.一方で,保菌鶏群の前に非保菌鶏群を処理すること(区分処理)で交差汚染を防ぐことができた.したがって,区分処理はカンピロバクターの交差汚染防止に効果的であることが示唆された.

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