2017 年 70 巻 5 号 p. 303-307
沖縄本島で山羊12頭を飼養する肉用繁殖山羊農場において,発咳と起立困難を主徴とする1頭の山羊の病性鑑定を行った.剖検では,肺の肝変化と腫大,心囊水貯留及び腸間膜リンパ節の出血と腫大がみられた.組織学的には,肺の気管支周囲のリンパ濾胞過形成,気管支粘膜過形成を伴う化膿性気管支肺炎及び間質性肺炎が認められた.細菌学的には,肺からMycoplasma ovipneumoniaeとBibersteinia trehalosiが分離された.免疫組織化学的検査に供するため,分離されたM. ovipneumoniaeを用いて兎免疫血清の作製を試みた.代謝阻止試験による力価測定の結果,1,280倍の高い力価が得られ,免疫組織化学的検査では病変部にM. ovipneumoniaeの陽性抗原が認められた.以上のことから,本症例はM. ovipneumoniaeとB. trehalosiによる混合感染症と診断した.