2018 年 71 巻 11 号 p. 631-635
15歳1カ月のホルスタイン種未経産牛が左乳房の腫脹と乳汁の排出を約2年間繰り返していた.その後,左乳房の腫脹と硬結及び乳汁排出の増加が認められ,全身状態が悪化したことから,罹患乳房の摘出術を実施した.術前に行った罹患乳房の超音波検査では,乳腺実質の菲薄化及び乳房内部の小房化した大小多数の囊胞を認めた.囊胞の境界は明瞭であり,内腔壁は平滑だった.囊胞内部は無エコーな貯留液が充満し,等エコーから高エコーの辺縁粗雑な腫瘤部が認められた.腫瘤部は最大で3.5×2.3cm大の充実性病変であり,不整形だった.乳汁からβ溶血性レンサ球菌が検出され,左乳房内部は大部分の正常構造が完全に失われていた.本症例は,病理組織学的検査より乳頭状囊胞腺腫と診断された.牛における乳腺の超音波検査は,腫瘍性病変の診断に有用な方法であると考えられた.