日本獣医師会雑誌
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獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
Sarcocystis 属が寄生していた鹿肉を生で喫食したことによる食中毒事例
山本 薫前島 圭中田 純子奥田 祐亮和田 安彦寺杣 文男工藤 由起子大西 貴弘
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キーワード: 鹿肉, 食中毒, Sarcocystis
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2020 年 73 巻 2 号 p. 111-115

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抄録

平成30年6月2日に,和歌山県で鹿刺し(筋肉及び肝臓)の喫食による患者3人の食中毒事例が発生した.鹿刺しからはSarcocystis truncata が検出され,S. fayeri と同様の下痢誘発性15kDaタンパク質の発現を確認した.厚生労働省はSarcocystis 属のうちS. fayeri を食中毒病因物質と規定している.本事例はS. truncata が病因物質の可能性が非常に高いと考えられたが,公的には病因物質不明の食中毒として報告した.過去にはS. sybillensisS. wapiti に汚染された鹿肉の喫食が原因と推察される下痢症事例の報告がある.非加熱獣肉の喫食による食中毒で下痢誘発性タンパク質を有するSarcocystis 属が検出された事例は,その種を問わず病因物質とすることが妥当だと考える.

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