2020 年 73 巻 6 号 p. 305-309
黄疸,血色素尿を伴う離乳期の黒毛和種子牛の死亡例が数年間にわたって散発している農場があり,病態から銅中毒が疑われた.この農場では,複数の飼料を組み合わせて給餌しており,飼料の銅濃度測定の結果,ほとんどの飼料に銅が含まれていた.子牛給餌飼料中の銅濃度は,飼育全期間を通じて日本飼養標準・肉用牛に示された要求量を超えていた.同農場で飼育されている子牛の血中銅濃度を測定したところ,群全体の血中銅濃度は月齢が進むにつれて上昇しており,持続的な銅の過給が推察された.発症例の血清,死亡例の血清及び肝臓から高濃度の銅が検出され,この群において,過剰な銅を含む飼料を多く摂取した個体や基礎疾患のあった個体が,慢性銅中毒を発症していたものと考えられた.