2021 年 74 巻 12 号 p. 773-780
2020年9月,長野県畜産試験場で,18カ月齢の黒毛和種肉用去勢牛1頭が急性の呼吸器症状を呈し死亡した.剖検では,肺全体が暗赤色化しており,間質性気腫を認めた.細菌学的検査では,肺病変部からグラム陽性球桿菌が分離された.病理組織学的検査では,化膿性線維素性肺炎が認められた.分離株は生化学性状検査でStreptococcus suis(S. suis)と判定されたが,S. suis 及びその近縁種に特異的なPCRでは菌種を同定することができなかった.そこで,16S rRNA遺伝子解析を実施したところ,既知の菌種には属さないレンサ球菌であることが判明した.本分離株と同一菌種と思われる菌による肺炎症例の報告はないため,本報はこの未知のレンサ球菌による牛の肺炎の初めての報告事例である.