抄録
本研究では,肉眼的に著しい脾腫と胸骨・椎骨骨髄の暗赤色化を特徴とし,組織学的に赤血球貪食能を示すT細胞性腫瘍が認められた高齢黒毛和牛4症例について論じる.同様の症例は,全国各地の食肉衛生検査所で発見され,従来の牛白血病とは肉眼的特徴が異なる点から,非定型牛白血病として扱われている.今回この4症例について,組織学的,免疫組織学的,PCR検査を実施した.ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色では,4症例中2症例の腫瘍細胞の細胞質に明瞭な好酸性顆粒を認めた.また免疫組織学的検査では,HEでの顆粒の有無にかかわらず,4症例すべての細胞質内にGranzyme B陽性顆粒を認めた.PCR検査では,牛白血病ウイルス遺伝子陰性であった.以上より今回の4症例は,T細胞大顆粒リンパ球性リンパ腫/白血病に該当し,発症に牛白血病ウイルスは関与しないことが示唆された.