2024 年 77 巻 10 号 p. e157-e160
北海道空知管内で飼養されていた5カ月齢の日本輓系種が,発熱,呼吸促迫及び下痢を呈し斃死した.剖検では,回腸壁の肥厚や斑状の褪色がみられ,回腸粘膜は皺壁の形成が認められた.細菌学的検査では,回腸粘膜及び結腸内容から,Lawsonia intracellularis 遺伝子が検出された.病理組織学的検査では,回腸における陰窩上皮細胞の腺腫様過形成がみられ,Warthin-Starry染色で陰窩上皮細胞の細胞質内に多数の湾曲した小桿菌が,家兎抗Lawsonia intracellularis 抗体を用いた免疫組織化学染色では,小桿菌に一致して陽性反応がみられた.細菌学的検査及び病理組織学的検査の結果から,本症例を馬の増殖性腸症と診断した.これまで,日本輓系種における本病の発生報告はなかったが,重種馬においても,本病の診断及び対策が必要である.